須賀:グーグルやフェイスブックなど、デジタル時代の覇者と言われるような巨大企業は儲けすぎだという批判もありますが、テクノロジーの進化によって職を失ったり、進化の恩恵を十分に受けられない人がいたりするということは、まったく別の問題系だと考えられますか?
中島:はい。GAFAのような企業が力を持ちすぎたせいで人々の職が奪われ、貧富の差が開いているわけではありません。デジタル化によって、1人当たりの生産効率が上がることで、失業率が上昇し、貧富の差が広がるという流れは、グーグルやフェイスブックを分割したところで変わりません。
ですから、この問題は、独占禁止法によって、巨大テック企業の影響力を抑えることで完結する話ではなく、より大きな福祉の問題であり、富の再分配をめぐる話になります。デジタル時代の富の再分配や税についての問題は、日本だけでなく、グローバルで取り組まなくてはならない問題です。
須賀:これまでの福祉のあり方は、国家が社会的な強者に対して課税を行い、再分配を行う仕組みでしたが、デジタル時代では、一国だけが税制度をうまく設計したとしても、グローバルでの連携がなければ、莫大な利益を得ている企業が、国家間の法のギャップを突くことで、合法的に節税できるようになっています。社会的弱者に富を再分配する主体である国家に対して、巨大企業の利益をきちんと移管してもらうための制度のアップデートやグローバルでの協調ための議論が必要です。
中島:これまでの税制度のままで、グローバル企業から税を取ることは非常に難しいですし、ビットコインなどの仮想通貨についても課税という観点からもきちんと検討しなくてはならないでしょう。日本の金融庁の動きはあまりにも遅いように感じます。ビットコインを排除するか認めるかといった議論ではなく、仮想通貨の存在を前提として、取引に対してどのように課税をし、課税をできない仮想通貨の使用についてはどのように禁止をするかといった、より積極的なアプローチで取り組む必要があります。グローバルで課税の仕組みを作ったとしても、仮想通貨に逃げられてしまえば、まったく意味がありません。
勉強をしない日本人
須賀:ご指摘いただいたような、日本のデジタルの分野におけるスピードの遅さやポイントのズレは、何が原因だとお考えでしょうか?
中島:やはり、「人」ではないでしょうか。日本は、企業や政治においても、いつまでも「古い人」たちが力を持ち続けますよね。さらに、そういった人たちの多くが学び続けようとしません。政治家の大半はデジタルの分野に関してまったくの勉強不足ですし、自分たちで問題を理解しようとせず、官僚の書いた原稿を読んでいるだけなので、問題の当事者として自分の言葉で語りかけることができません。日本の政治家のスピーチがまったく響いてこないことには、こういった原因があるのだと思います。
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