須賀:ただ、日本では、セキュリティ面での懸念などといった理由で、オープンソース化について、言い逃れられてしまうことも想像できます。
中島:そもそもオープンソースにして、セキュリティに問題があるようなソフトはダメなソフトなんです。オープンでも壊れないようにすることが重要なのであって、Linuxなどもオープンソースですが、まったく問題ありませんよね。オープンソース化に着手すれば、日本社会は劇的に変わりますよ。市町村で作るソフトウェアはすべて同じでもよいはずです。
例えば、ある県で作ったソフトをオープンソースにして、そのソースコードを見ながら、ほかの県が作るという流れにすれば、コストは安く済みますし、5年に1回、コードを全面書き換えし、多額の費用がかかるようなこともなくなります。繰り返しになりますが、デジタル庁を創設する場合、必ずITベンダーとの問題に取り組まなくてはならないでしょう。オープンソース化は、1つの解決策になるはずです。
パンデミックでより深まる分断
須賀:この問題に関する議論は長い間続いていますが、オープンソース化は重要な解決策になりえますね。現在、中島さんはアメリカにいらっしゃいますが、コロナウイルスのパンデミックによる影響については、どのようにお感じでしょうか?
中島:アメリカにいると、今回のパンデミックによって、貧富の差がより一層拡大したことを感じます。失業率のデータを見ても、パンデミックによって失業した人の割合は低所得者のほうが高いですよね。小さな小売店やレストランの多くも倒産の危機を迎えていますが、もともと収入が高かった人たちは、リモートワークなどに移行して、パンデミックによる影響を抑えながら仕事を続けることができています。
また、多くの人が職を失い、経済的に困窮しているにもかかわらず、株価はむしろ上昇を続けており、資産を増やしている人たちもいます。パンデミックによる危機は、社会で弱者とされる人たちのグループにより重く直撃していると言えるのではないかと思います。
須賀:社会において弱者とされる人たちに、デジタルの恩恵を広げていくためには何が必要になりますか? 日本では高齢者の方々がデジタルテクノロジーを使いこなせないことによって、テクノロジーの恩恵を受けられていないことが課題の1つとして挙げられるかと思います。
中島:本当にいいデジタルツールとは誰にでも使えるものであるべきですから、デジタルツールを使いこなせない人たちを批判すべきではありません。デジタルに疎い人でも使えるようにすることが私たちエンジニアの仕事です。そのようなデジタルに疎い人のためにサービスを考える場合、必ずしもスマートフォンやPCも起点に考える必要もないでしょう。例えば、スマートフォンの代わりに、ボタンを押すだけのシンプルなデバイスやツールなどを検討したりと、柔軟にアイディアを練ることが重要です。
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