70代の高齢警備員「老後レス社会」の過酷な現実 人生から「老後」という時間が消えてゆく

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コロナ禍は前出の柏耕一さんも直撃しました。政府が緊急事態宣言を出していた2020年4月の出勤日は、たったの3日です。当時、柏さんの現場は千代さんと同様、大手パチンコ店。主に駐車場に出入りする車の誘導をしていました。1日2交代制で、4人の警備員がシフトを組み、週末の出勤もあるほどだったそうです。

ところが、4月7日からパチンコ店が突然、事前予告もなく閉店してしまい、それ以降の仕事が完全になくなったのです。続く5月も、ゴールデンウィークと緊急事態宣言の影響で、出勤日数はわずか7日。4月と5月の収入は、合計で9万円に激減しました。

コロナ禍でも警備員の需要は堅調だった

しかし緊急事態宣言解除後、状況は一変します。2020年5月下旬、柏さんの勤務シフトが通常に戻ってきました。仕事は水道工事の現場での交通誘導です。1日のタイムテーブルを見てみると――。

・午前5時 起床
・午前8時 現地到着、着替え
・午前9時 仕事開始
・午後6時 終業
・午後8時 帰宅

このハードな勤務が20日間も続きました。つまり警備員という仕事の需要が回復したのです。いや、以前にも増して求められるようになったと言えるかもしれません。

職業別の有効求人倍率が、その事実を物語ります。緊急事態宣言が出た2020年4月以降の有効求人倍率を「全職業」と、警備員を含む「保安の職業」で比較してみましょう。

職業別の有効求人倍率
全職業 保安の職業 備考
4月 1.13 5.91 4月7日、緊急事態宣言発出(5月31日まで)
5月 1.02 5.74  
6月 0.97 5.82 「全職業」の有効求人倍率が1を割り込む
7月 0.97 6.26 「保安の職業」の有効求人倍率が回復基調
8月 0.95 6.55  
9月 0.95 6.64  
10月 0.97 6.53  
11月 1.00 6.58  

やはり警備員という仕事の需要は、コロナ禍でも総じて堅調だったことがわかります。その理由を、柏さんは次のように分析します。

「交通誘導の主たる仕事場は、ガス管や水道管の入れ替えや建設現場、電線の点検・架設などで屋外が多く、『3密』にはなりにくい。また、コロナのような大きな外的要因にも左右されることが少ないのは、人々の社会生活に密着した必要不可欠な仕事であることを物語っているんじゃないでしょうか」

冒頭で記したように、高齢者が警備員に占める割合は驚くほど高く、そしてその割合は年々、上昇し続けています。

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