共通テストでも変わらぬ「自己採点制度」のナゾ 過渡期のまま40年も続いている日本の入試制度

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なぜ大学出願前に成績開示ができないのか。大学入試センターの広報はこう答える。

「スケジュールの問題です。今年は新型コロナで変則的ですが、例年なら共通テストの本試験は1月中旬の土日に実施し、その翌週の土日が追試。国公立大学の出願は追試の翌日から始まります。

一方、大学入試センターが、受験者の成績を確定できるのは、追試の10日後あたり。出願期間の終わり近くです。大学への成績提供はインターネットで行っていますが、受験者への成績通知は郵送です。本人に届かないケースなども毎年あり、かなりの日数が必要で現行のスケジュールの中では難しいです」

過渡期のまま40年

入試の日程を成績開示に合わせ変更するには協議が必要だ。現行の日程の中で可能にする手立てとしては、出願のオンライン化が考えられる。多くの大学がすでに導入しているが、成績通知もオンラインでできる。

(出典:AERA dot.より)

さらに解答を紙のマークシートからコンピューターへ変えれば採点期間も大幅に短縮できる。

実際、大学入試センターではコンピューター化への研究を進めているが、「受験者用の端末確保やその費用、試験会場の均質なネットワーク環境の整備など課題は多い」と担当者は言う。

自己採点で個別試験に出願する制度は共通1次開始以来、約40年続くが、公的に議論され変更されたときが一度だけあった。1987年の共通1次だ。このときは自己採点で出願先を決めるのを避けるため、共通1次実施前に大学に出願する方式がとられたが、大量の門前払いと定員割れが発生するなど問題が多く、1回でとりやめになった。

大学入試学が専門の倉元直樹・東北大学教授は言う。

「これまでは出願前の成績通知を実現する手段がありませんでしたが、今はオンライン化で可能性が出てきています。中国の全国統一入試では、試験前に大学に出願する方式から自己採点方式の過渡期を経て、受験生に得点が通知された後に出願する制度に移行したと聞きます。

日本はいわば過渡期のまま40年来てしまったと言える。受験生には、情報をきちんと持って意思決定する『インフォームド・ディシジョン』の権利がある。いつまでも先送りはいけません」

(編集部/石田かおる)

AERA dot.
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