今回の蔑視発言騒動のほかにも、長年、権力に居座ってきた某医大の学長がパワハラで問題になったり、「プロ経営者」として祭り上げられてきた社長が家庭内での暴力騒動で逮捕されたり、と「権力を持つ男性」の失言やスキャンダルが後を絶ちません。
もちろんすべての実績が否定されるものではなく、それが年齢や性別によるものというわけでもないでしょう。
一方で、「権力は人を腐敗させる」とはよく言われることですが、古今東西、「権力の虜」になった指導者が道を誤る例は事欠きません。
「家庭教師」としてエグゼクティブのコミュニケーションの指導にあたってきた私も、「共感力」の乏しい「パワハラ型」の「権力モンスター」リーダーが君臨し、会社をダメにする姿を数多く身近で見てきました。
権力によって「現実」と「自己認識」がずれていく
承認欲求が強く、傲岸不遜、上にはおべっかを使うが、下にはつらく当たる。そもそも、リーダーにのし上がる人には、「マキャベリアン(個人の野望と利益に固執し、人との関係性より、権力や金を優先する)」「サイコパス」「ナルシシスト」という、心理学では「暗黒の三元素(Dark Triad)」と呼ばれる3つの特質をもった人が多いとされています。
最近では、これに「サディズム」が加わった4要素という説もあります。一般人のサイコパスの出現率は1%である一方、エグゼクティブになるとその割合が3~5%になるというデータもあるほどです。
「共感力」のかけらもなく、手段を選ばずに人を蹴落とす一方で、「過剰なコンフィデンス(自信)」が「コンピテンス(能力)」と勘違いされ、登用されやすい。これが「共感力のない無能なナルシスト」が出世するからくりです。さらに、もともとそうした資質を持っていなかったとしても、権力が人を変えてしまうこともよくあります。
権力の座に居座り続けることで、エゴが肥大化し、傲慢さと行きすぎたプライドや自信が他者を見下す姿勢へとつながる一方で、「つねにこびへつらわれる」という世間とは離れた常識の中で、「現実」と「自己認識」がずれていき、「共感力」も培われないのです。
こうした状態は「自信過剰(hubris)シンドローム」とも言われ、「ある種の病気」との説もあります。
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