実は激増「夫婦喧嘩が児童虐待になる」衝撃事実 7年で8倍!脳にダメージ与える「面前DV」

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面前DVでも、視覚野が萎縮する。小児期に両親のDVを長時間目撃してくると、視覚野が平均6.1%減少していたとされる。

暴言を体験すると、聴覚野が逆に増大していることもわかった。この場合、「両親からの暴言」のほうが、「1人の親からの暴言」よりも影響が大きく、母親と父親では、母親からの暴言に強く反応しているという。暴言の程度が深刻、頻繁であると脳への影響も大きく、両親のDVも身体的よりも言葉の暴力に接したほうが脳のダメージは大きいとされる。

ハーバード大学での調査によると、幼いころに夫婦喧嘩を見て育ったグループはIQと記憶力の平均点が低い傾向にあったとされる。

こうした事情を、どれだけ多くの日本人が知っているかは別として、児童虐待の相談対応件数の増加は、それだけ社会の関心や認識が変化してきていることの証しであることは、まず間違いない。

凶悪事件が減って虐待を認知しやすくなった?

そこに加えて、実はもうひとつ裏の社会的事情がある。昨今、いわゆる凶悪事件が減っていることだ。関西のある新聞記者がいう。

「10年前には、大阪府警内に常時10件以上の“帳場”(捜査本部)が立っていたのに、いまは半分もない。それだけ人が余るので、いまは児童虐待に回している」

いわゆる暴力団の表立った抗争事件も減り、経済事犯が多くなった。特別捜査本部の設置も減る。それと入れ替わるように、幼い子どもが命を奪われる事件の報道が全国的にも目立つようになった印象だ。

ただ、それだけ発覚する認知件数が増えたということであって、潜在的には以前から虐待は多かったと見ることもできる。

児童虐待への社会全体の認識や視線が変わりつつあることは、むしろ歓迎すべきことではあるが、いつか増え続けるこの数値を減少へと転じさせなければならない。そのことをもう一度、確かめておく必要がある。

青沼 陽一郎 作家・ジャーナリスト

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あおぬま よういちろう / Yoichiro Aonuma

1968年長野県生まれ。早稲田大学卒業。テレビ報道、番組制作の現場にかかわったのち、独立。犯罪事件、社会事象などをテーマにルポルタージュ作品を発表。著書に、『オウム裁判傍笑記』『池袋通り魔との往復書簡』『中国食品工場の秘密』『帰還せず――残留日本兵六〇年目の証言』(いずれも小学館文庫)、『食料植民地ニッポン』(小学館)、『フクシマ カタストロフ――原発汚染と除染の真実』(文藝春秋)などがある。

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