「ワクチン開発後れた日本」がこれからできる事 民間企業などの研究開発を促進するには

✎ 1〜 ✎ 40 ✎ 41 ✎ 42 ✎ 最新
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

具体的には、政府による感染症領域の医薬品マーケット創出といった感染症領域そのものに対する直接的インセンティブと、感染症領域への参入がその他の領域に対する優遇措置を誘発する間接的インセンティブだ。

直接的インセンティブについては、なにも日本政府による危機管理医薬品の買い取りおよび国内備蓄の確約だけではない。まず、日本政府は、感染症領域の医薬品に関する薬事審査について、ほかの領域の医薬品と区別してファストトラックを設けたり、市場独占の許可を与えたりすべきだろう。

例えば、アメリカでは、昨今大きな問題となっている抗菌薬に対する細菌の耐性化と、それに対抗する新規抗菌薬の不足という問題の解決を目指し、製薬企業に新たな抗菌薬の開発インセンティブを付与するため、2012年にGAIN法を制定。公衆衛生上重大な影響を与えうる耐性菌に有効な新規開発の抗菌薬に対して、市場独占期間を5年間延長するなどの優遇措置を与えている。

日本以外の市場を見据える必要性

次に、日本政府が仲介することで、Gaviワクチンアライアンスやユニットエイド(UNITAID)といったワクチンや、ほかの感染症領域の医薬品を扱う保健分野の国際機関に官民で売り込むことが望まれる。それらの国際調達を勝ち取れば、世界中の途上国の感染症医薬品市場に手を広げることが可能となる。

実際、インドのワクチン大手企業Serum Institute of India (SII)は、途上国への新型コロナワクチン供給を行うGaviワクチンアライアンスからの調達を獲得している。

政府がアジア各国の薬事審査・承認機関と連携し、各国間の規制調和を促進することも必要だ。アジア地域の医薬品規制調和によって、日本の製薬企業は、人口構造が若く、感染症の流行もあるアジアの感染症医薬品市場の獲得が容易になる。

日本の製薬企業による世界保健機関(WHO)の医薬品承認「PQ(Prequalification)」の取得についても政府が組織的に支援すべきだろう。十分な薬事審査・承認能力がない途上国では、WHOのPQが与えられている医薬品を認可の目安とする国も多い。したがって、日本の製薬企業の製品がPQのリストに掲載されれば、世界中の途上国の医薬品市場に広く進出することも可能となる。

次ページ間接的インセンティブとは
関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事