野球離れを防ぐ「指導者ライセンス」の深い教え 山中正竹氏に聞く日本野球の未来像(下)

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「野球指導は、練習時間が長くて、指導者が暴言、暴力をふるうから怖い。そして昔、自分が教えられたことを今もそのままやっていると言われます。また指導者が勝ちたいがために子どものけがのリスクを高めてしまう。そういう指導者が子どもを野球嫌いにしてしまいます。指導者の意識を変えることで、こうした指導を変えていきたい。

さらに野球はルールが複雑で難しいと言われます。その難しさをどういうふうに取り払うかも課題ですね。今は共働きが当たり前になっていますが、野球は親の負担が大きいとも言われます。でも負担の軽減は指導者の考え方ひとつで可能だと思います。そして丸坊主は本人が希望してそうするのならいいですが、強制するのはどうなのか。U12ライセンスの普及を通じて、こうした『古い野球』を全体の雰囲気として時代遅れに感じさせる雰囲気をつくっていきたい。

端的に言えば、これからの野球に必要なのは『インテグリティ』でしょう。相手を尊敬し、選手のことを考える中で、正々堂々と試合をする。そういう高潔さ、正しさが大切になると思います」

野球指導者に対する「信頼感」

2021年1月23、24日、公認野球指導者基礎Ⅰ<U-12>をテキストにして2020年度野球指導者講習会(BASEBALL COACHING CLINIC=BCC)が行われた。従来は会場でのセミナーだったが、今年はオンライン開催だった。Zoomのウェビナー形式で800人が受講した。

BCCで話す山中会長(写真:BFJ提供)

「毎年BCCを受講している人が“ここにきている人は質が高いんです。ここにきていない人が野球界の足を引っ張っています”と言いました。確かにそういう一面がありますが、みんながここで勉強をして野球を改革し続けること、いい野球をやり続けることが大事です。

そうすると母親たちが子どもをそういう指導者に託そうと思うようになります。今もふんぞり返っている指導者がいるかもしれませんが、母親と子どもたちが指導者を選ぶようになれば、慌てて受講するようになるでしょう」

山中正竹氏の口ぶりからうかがえるのは、野球指導者に対する揺るがない「信頼感」だ。「野球離れ」などいろいろな問題があるが、野球界は、自分たちの力で未来を切り開いていける、そう信じて疑わない力強さを感じた。

「コロナ禍で野球界も大変でしたが、それでも昨年は何とか甲子園で野球をすることもできたし、プロ野球も都市対抗も早慶戦もできた。“野球をやりたい”という思いを凝縮させるなかで、私たちはみんな“野球が好きだった”ことを思い知ったはずです。そして、社会を喜ばせることができる『野球の力』を改めて認識しました。将来を考察する時間を与えられたという点は、ポジティブに捉えたいと思います。

指導者講習会(BCC)の冒頭で、私は受講者の皆さんに、サッカーの元フランス代表監督のロジェ・ルメールさんの『学びをやめたときに指導をやめなければならない』という言葉を紹介しました。指導者は学び続けなければなりません。私も野球指導者の皆さんとともに、学び続けていこうと思います」

広尾 晃 ライター

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ひろお こう / Kou Hiroo

1959年大阪市生まれ。立命館大学卒業。コピーライターやプランナー、ライターとして活動。日米の野球記録を取り上げるブログ「野球の記録で話したい」を執筆している。著書に『野球崩壊 深刻化する「野球離れ」を食い止めろ!』『巨人軍の巨人 馬場正平』(ともにイースト・プレス)、『もし、あの野球選手がこうなっていたら~データで読み解くプロ野球「たられば」ワールド~』(オークラ出版)など。

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