野球離れを防ぐ「指導者ライセンス」の深い教え 山中正竹氏に聞く日本野球の未来像(下)

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「日本にスポーツマンシップを本格的に奨励したのは、スポーツコンサルタントの故広瀬一郎さんでした。私は2002年頃に広瀬さんの著書を読んで、目からうろこが落ちた思いでした。われわれはそれ以前から『スポーツマンシップ』という言葉を口にしていましたが、本当の意味を知らずに使っていた。いい年をして恥ずかしいと思いました。

スポーツマンシップは、チームメイト、対戦相手、審判、そしてスポーツそのものへのリスペクトが基本になっています。この考え方は人間教育にも社員教育にも使えます。これを日本の野球人に伝えていけば、社会や世界で認められ、尊重される人になるだろう。

むしろこの種の講習会で、これまでなぜスポーツマンシップの講座がなかったのか、と思って導入を指示しました。それでもまとめるのに2年くらいかかりました。導入前には指導者や選手の前に、組織の役員たちも勉強会をしましたが、“なるほどそういうことだったんだ”という人もたくさんいました」

海外で指摘されるスポーツマンシップの欠如

国際野球の舞台では、各レベルの日本チームは行きすぎた「勝利至上主義」で、たびたびひんしゅくを買ってきた。海外の指導者から「お前たちは確かに強いが、俺たちはお前たちの野球は絶対にマネしない」と言われることさえあった。野球だけではないが、スポーツマンシップの欠如は、海外で指摘されることがしばしばあったのだ。

全日本野球協会(BFJ)の山中正竹会長

「スポーツマンシップを知らないまま世界に出て“なぜこれが非難されるの?”という思いをした指導者は多いんです。そこで勉強をして知らなかったことを恥ずかしく思い、ほかの人たちに伝えていく人が増えてきた。

中には“国際社会ではこれが常識だ”と話しても“国際、国際言うな。日本には日本のやり方がある”と反論されたりもしますが、スポーツマンシップは粘り強く伝え続けていかなければなりません。“そんな甘っちょろいことで勝てるかい”という指導者は、相手に勝つことしか考えていない。私に言わせれば、それは野球に似た勝負事をやっているだけで、スポーツではないと思います」

テキストでは以後、以下のカリキュラムが並んでいる。

ティーチングとコーチング
体罰・暴力・ハラスメントの根絶
リスクマネジメント/安全管理
チームマネジメント
指導者に必要な医科学的知識
【実技】投動作の指導
【実技】捕球動作の指導
【実技】打撃の指導
【実技】ボールゲームとその指導

これを見てもわかるように、U12テキストは「技術」よりも、指導者の心構えや、選手に対する安全管理、マネジメントなどがより重要視されていることがわかる。反対に言えば、これまでの野球指導は、この部分が弱かったということなのだ。

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