コレステロールに一喜一憂しても意味がない訳 大事なのは今後10年間の病気のリスクを知る事

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コレステロールは、食事から摂取するのは2割で、体内で作られるのが8割と言われています。食事による影響は相対的に少なく、コレステロールを多く含む卵を控えても意味がないという議論があります。

今わかっているエビデンスではどうなのかを見ていきましょう。卵摂取がコレステロールを上げるかどうかということですが、わずかに上げるという研究があります(※5)。

また、その結果として、心筋梗塞が増えるかどうかですが、2020年、医学誌『ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル』に掲載された、ハーバード大学の健康な医療従事者を対象とした研究(複数の研究を統合したメタアナリシスの形式になっています)では、一日1個程度の摂取なら、心筋梗塞のリスクは上がらないという結果が出ています(※6)。

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日本人を対象とした研究では、心筋梗塞と卵を食べる頻度には関連がないという結果が出ていますが、「一日の量」には言及がありません(※7)。

現時点では、健康な人には、卵の摂取量は大きな影響をもたらさないというメタアナリシスが多いですが、断定はできない状態です。

コレステロールに関して、エビデンスという観点から注意すべきことは、欧米のエビデンスをそのまま日本人に当てはめられない可能性が高いということです。また、個々人により、心筋梗塞や死亡のリスクは異なるので、値だけを見て一喜一憂してもいけないし、同じ値でも治療法が異なる場合があることを理解しましょう。

卵は「一日1個」ぐらいが無難

卵関連の研究でも、対象は欧米人が多く、アジアの研究ではそもそも卵の消費量が少なかったりするので「いくら卵を食べても問題ない」と考えるのはまだ危険であり、現時点では一日1個くらいにしておくのが無難でしょう。

また、卵では、コレステロールは黄身に含まれています。そこで、卵が好きで、一日1個では物足りない、もっと食べたいという人がいれば、白身を食べるぶんには問題ないでしょう。

いずれにしても、欧米では、悪玉コレステロールの危険性や治療の効果について、多くのエビデンスがありますが、日本人の信頼できるエビデンスがそれほど多くないのが実情です。今後、信頼できるエビデンスが増え、日本人の基準がより適正になっていくことが望まれます。

(※1)2019 ACC/AHA Guideline on the Primary Prevention of Cardiovascular Disease
(※2)Nakamura H et al for MEGA study group“ Primary prevention of cardiovascular disease with pravastatin in Japan (MEGA study): a prospective randomised controlled trial.” Lancet. 2006;368: 1155-63.
(※3)Imamura T et al. “LDL cholesterol and the development of stroke subtypes and coronary heart disease in a general Japanese population: the Hisayama study”Stroke. 2009,40(2):382-8.
(※4)Noda H et al.“Low-density lipoprotein cholesterol concentrations and death due to intraparenchymal hemorrhage: the Ibaraki Prefectural Health Study” Circulation. 2009,28;119(16):2136-45.
(※5)Rouhani MH et al.“ Effects of Egg Consumption on Blood Lipids: A Systematic Review and Meta-Analysis of Randomized Clinical Trials”J Am Coll Nutr. 37(2):99-110. ,2018
(※6)Drouin-Chartier JP et al.“Egg consumption and risk of cardiovascular disease: three large prospective US cohort studies, systematic review, and updated meta-analysis”BMJ. 2020;368:m513.
(※7)Nakamura Y et al. Egg consumption, serum total cholesterol concentrations and coronary heart disease incidence: Japan Public Health Center-based prospective study. Br J Nutr. 2006
Nov;96(5):921-8.
松村 むつみ 医師・医療ジャーナリスト

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まつむら むつみ / Mutsumi Matsumura

1977年愛知県生まれ。医師・医学博士・医療ジャーナリスト。2003年、名古屋大学医学部医学科卒。03年、国立国際医療センター(現・国立国際医療研究センター)臨床研修医。06年、横浜市立大学病院附属市民総合医療センターの放射線医学教室に入局、勤務医として大学病院に従事しながら研究を続け、放射線診断専門医、核医学専門医、博士号(医学)を取得。17年よりフリーランスの画像診断医に。同時期より各種メディアに医療記事を執筆。一般の人への医療リテラシー向上に貢献するべく幅広く活動している。日本医学ジャーナリスト協会会員、アメリカヘルスケアジャーナリスト協会会員。

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