ワクチン接種の前に知っておきたい「抗体」の話 「抗体」とは何か知っていますか? 

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ワクチン接種の前に知っておきたい「抗体」について、解説します(写真:Meyer & Meyer/iStock)
ここ最近は、皆さんが生きてきた中でも最も免疫を意識しているときではないでしょうか。ワクチンの接種も始まります。世界的な生命科学者であり、ノーベル賞受賞者の共同研究者でもある吉森保先生。その吉森先生が、生命科学の基礎から最先端までをわかりやすく解説した著書『LIFE SCIENCE 長生きせざるをえない時代の生命科学講義』より、抗体について解説します。

ウイルスは、私たちの細胞の「鍵」を開けて入ってくる

抗体とは何か知っていますか? 何となく、「ワクチンなどで人為的に病原菌を入れて、それに勝つ体をつくる」とは知っているけど……という方も多いのではないでしょうか? 前回記事では免疫についてお伝えしましたが、今回は抗体について詳しく説明します。

まず、知っておいてほしいことは、体の中での出来事は、物理的に「タンパク質とタンパク質の形がぴったり合ってくっつく」ことで起こるということです。体のたくさんの現象は、まるで、「鍵と鍵穴」のように、形の一部が合うことで、動いたりします。ぜひこれを覚えておいてください。

まず、ウイルスがどう細胞に入ってくるかを知りましょう。ウイルスは、細胞ならどれにでも入れるわけではありません。細胞に入るには鍵が必要です。

例えば、あなたが自宅に入るときに、鍵穴に自宅以外の鍵を差し込んでも開かないのと同じで、ウイルスは自分の表面にあるスパイクというタンパク質の形に合ったタンパク質を細胞の表面に見つけないと侵入できません。ここでも、鍵と鍵穴のような関係が必要です。ウイルスが鍵を持ち、細胞が鍵穴を持たないといけないのです。

「なんで敵が細胞に合った形の鍵を持ってるの?」と思う人もいるかもしれません。ウイルスは進化の過程で、合鍵を手に入れたのです。しかも、「ぴったり」の程度はけっこう曖昧で、似たような鍵で、鍵穴がなんとなくはまって開くようなイメージです。

抗体も、この原理です。「鍵と鍵穴方式」で侵入を防ぎます。ウイルスという鍵にくっついて、鍵穴に差し込めなくするのです。

実際にあなたの家の鍵も、鍵穴に差し込む部分に何かがくっついてしまったら、差し込めなくなりますね。抗体はウイルスにくっついて鍵の形自体を変え、細胞の鍵穴と合わないようにしようとするわけです。

ただ、抗体の大きな問題があります。それは、せっかく抗体ができても、ウイルスの鍵じゃない部分にくっついてしまう、つまり「効かない」抗体ができることもあります。

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