伝説の銀行マンが「高級店での接待」を避ける訳 「いきなり高級店に行っても警戒されるだけ」

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小
住友銀行の「将来の頭取候補」とまで目された伝説の銀行マン・國重惇史氏。彼が「高級店」での接待を避けた理由とは?(写真:IYO/PIXTA)
「戦後最大の経済事件」と言われるイトマン事件の告発者として知られる元住友銀行取締役・國重惇史。ベストセラー『住友銀行秘史』を著して以来消息の途絶えていた彼の証言、メモ、資料をもとに「バブルと銀行」の時代を描いたのが、児玉博著『堕ちたバンカー 國重惇史の告白』(小学館)である。
「将来の頭取候補」とまで目された彼が役人から情報を引き出す際や、重要な頼み事をする際、あえて「焼き鳥屋」を選んだ理由とは?

クラブや料亭を使うのは「下の下」

「やっぱり、高級クラブや料亭に連れていって接待するんですか?」

こう聞くと、國重は露骨に顔をしかめた。

「そりゃ、クラブや料亭に行くこともあるけども、肝心な話の時は焼鳥屋なんだよ。焼鳥屋。クラブや料亭を使うなんていうのは、下の下なんだよ」

1998年(平成10年)、大蔵省、日銀を舞台にして起こった接待汚職事件。多数の逮捕者、また自殺者までを生んだこの事件がきっかけとなり大蔵省は解体され、金融部門の検査・監督が分離し、金融庁が誕生する。これを機に大蔵省の力は目に見えて失墜していく。

この事件の舞台の1つとなったのが“ノーパンしゃぶしゃぶ”が売りの店だった。下卑た接待の象徴としてマスコミに大きく取り上げられもしていた。

國重に言わせるならば、“ノーパンしゃぶしゃぶ”による接待など考えられもしなかったという。國重自身行ったことがないと話していたが、その口ぶりには、嫌悪の思いが強く滲んでいた。

住友銀行へ入るMOF検(大蔵省の検査)の日取りも、秘中の秘である各行の収益表も、損益状況表も、國重はすべて焼鳥屋で教えてもらい、“ブツ”を手に入れたという。

なぜ焼鳥屋なのか? なぜ焼鳥屋でなければならないのか? そこには國重の人間心理を読み尽くした、ある種の“美学”が存在していた。

次ページ決して「個室」を予約してはならない
関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事