伝説の銀行マンが「高級店での接待」を避ける訳 「いきなり高級店に行っても警戒されるだけ」
クラブや料亭を使うのは「下の下」
「やっぱり、高級クラブや料亭に連れていって接待するんですか?」
こう聞くと、國重は露骨に顔をしかめた。
「そりゃ、クラブや料亭に行くこともあるけども、肝心な話の時は焼鳥屋なんだよ。焼鳥屋。クラブや料亭を使うなんていうのは、下の下なんだよ」
1998年(平成10年)、大蔵省、日銀を舞台にして起こった接待汚職事件。多数の逮捕者、また自殺者までを生んだこの事件がきっかけとなり大蔵省は解体され、金融部門の検査・監督が分離し、金融庁が誕生する。これを機に大蔵省の力は目に見えて失墜していく。
この事件の舞台の1つとなったのが“ノーパンしゃぶしゃぶ”が売りの店だった。下卑た接待の象徴としてマスコミに大きく取り上げられもしていた。
國重に言わせるならば、“ノーパンしゃぶしゃぶ”による接待など考えられもしなかったという。國重自身行ったことがないと話していたが、その口ぶりには、嫌悪の思いが強く滲んでいた。
住友銀行へ入るMOF検(大蔵省の検査)の日取りも、秘中の秘である各行の収益表も、損益状況表も、國重はすべて焼鳥屋で教えてもらい、“ブツ”を手に入れたという。
なぜ焼鳥屋なのか? なぜ焼鳥屋でなければならないのか? そこには國重の人間心理を読み尽くした、ある種の“美学”が存在していた。
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