ネット広告大手が「モノ言う株主」に狙われる訳 親子上場や多額の現預金保有に不満を表明

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インターネット広告代理業大手のデジタルホールディングス。株価急騰の裏で何が起きているのか(記者撮影)

東証1部上場で、インターネット広告代理業大手のデジタルホールディングス(HD)の株価が急騰している。

2月4日の株価終値は前日比で10%以上上昇した。というのも、同社の大口投資先で、ネット印刷や運用型テレビ広告を展開しているラクスル株を全株売却すると発表したことが好感されたからだ。売り出し価格は「未定」としているが、4日の終値から計算すると、100億円超になるとみられる。

親子上場を問題視し、株主提案

株価急騰の背景にはアクティビストファンド、いわゆる「物言う株主」の存在がある。

デジタルHDは、オプトを始めとするインターネット広告会社を傘下に抱える持ち株会社で、2019年12月期の売上高は899億円。インターネット広告業界では売上高2位を誇る。「まるでソフトバンクグループのようだ」(証券アナリスト)という声が上がるように、近年はラクスルや中古品売買の掲示板を手掛けるジモティーに出資するなど、投資事業を積極化させている。

そのデジタルHDがある事件でつまずいた。中小企業向けネット広告を手掛ける子会社で東証1部上場のソウルドアウトの従業員が、医薬品ではないサプリメントに肝機能の改善効果があると宣伝したとして、医薬品医療機器法違反の疑いで2020年7月に大阪府警に逮捕されたのだ。

これに、同社株を約3%保有する香港の投資会社リム・アドバイザーズが噛みついた。親会社として取締役を派遣しているにもかかわらず、適切な監督責任を果たしていないとして、上場子会社の管理に関する条文を定款に盛り込むべきだと1月21日までに株主提案したのだ。

事情に詳しい関係者によれば、リムは2017年7月にソウルドアウトの上場を疑問視し、「中途半端に上場させるくらいなら、身売りさせるべき」と迫っていた。

「ソウルドアウトは、ネット広告部門の中小企業営業というデジタルHDの社内ベンチャーが出自。上場益を得るために、本体から分割して上場させたとみられている。経済産業省が2019年にまとめたコーポレートガバナンスに関する報告書でも問題視されている『親子上場』の典型だ。しかも、上場後の監督を怠っており、リムはガバナンス面から大きな問題があるとみたようだ」(ファンド関係者)

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