日本だけじゃない「人口減少」が映す心配な未来 確実に予測できる事態への備えはできているか
国連の人口推計レポートでも指摘しているが、生産年齢人口が他の年齢階層よりも大きく増加している国では、人口ボーナスによる経済成長が望めるとしている。ただし、政府が若者向けの教育や保健に投資し、持続可能な経済成長を推進する努力が必要だ。
言い換えれば、人口減少する国は経済成長が鈍化し、日本のように国際競争力を徐々に失っていく可能性がある。イノベーションが進めば、人口減少があっても経済成長が鈍化する事態にはならない、という考えもあるが、問題はイノベーションを担う世代を育てられるかどうかだ。
世界的な人口減少になれば、介護などの公共サービスを提供するために、海外からの移民受け入れが不可欠になる。一人っ子の多い中国が人口減少国の仲間入りをすれば、大量の移民が介護要員として中国に流れる恐れがある。国を維持していくのに移民は不可欠な存在になるわけだ。「移民したい国」になれるかどうかが、今後の経済成長のカギを握っていると言っていいかもしれない。
日本のような、外国人労働者を冷遇する国はますます移民争奪競争に置いて行かれることになる。法務省「出入国管理統計年報」などから算出したシミュレーションでは、2050年には、日本の在日外国人は757万人になると試算されている。現在(2010年)よりも554万人増える勘定になる。
人口減少=税収不足は大きな課題になる。本格的な人口減少時代に入る前に、税収不足への対策を急ぐべきだ。財政健全化、社会保障制度をきちんと整備した国が、国際競争力を高める可能性が高い。
「負の連鎖」が起こりうる
景気が低迷すれば、食料や原油価格は下落する。人口減少→景気低迷→デフレ→食料不足、エネルギー不足の「負の連鎖」がたびたび起こる社会になる。日本だけの人口減少であれば克服できる問題も、世界全体となると深刻度は大きく増すはずだ。
アメリカが、2050年代以降も人口増加を維持できるかどうかで、世界のパワーバランスは大きく変化していく可能性が高い。さまざまな分野で中国に肉薄されているが、移民排除のトランプ前政権によって国が分断され、アメリカ最大の成長要因と思われていた、人口増加と海外からの優秀な人材の吸収が滞ってしまっている。この影響は、今後大きな意味を持ってくるはずだ。
人口減少というリスクを知りながら未然に有効な手を打てずにきた日本政府の罪は重い。とはいえ、どの国も有効な手を打てずに苦慮しているのも事実だ。気候変動と並んで、世界共通の課題という認識を持つところからスタートしないと解決策は見いだせないのかもしれない。
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