ミャンマーの若者たちが示す静かで力強い蜂起 SNSを武器に軍への批判を世界へ向けて発信

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世界の興味関心は、いっときのニュースの波が終わったら薄れてしまう、だからこそミャンマー人たち自らが立ち向かおう、と力強い言葉で投稿した後、「よく食べて、よく寝て、家にいましょう。これから来る日々に向けて落ち着いた対応を準備しましょう」と、自身に言い聞かせるようにコメントした。

そして、「海外の友人たちからの質問に向けて」と題してこうも記した。

「“市民はなぜ街頭に出て抗議を行わないのか、なぜ?”――それは、雇われた軍隊の支持者らが国旗や軍旗を翻して路上にいるからです。彼らは市民に外に出るよう挑発しています、そうすれば彼らは攻撃できるからです。すでにジャーナリストが攻撃されました。市民は恐れを抱いています。私たちの多くは、近隣の人たち、家族、友人、皆恐れを抱いています。

誰も血が流れる事態を見たくなどありません。私たちはこの地球上で最も残酷な軍隊と立ち向かっているのです、彼らは武器と権力を持っています、それは私たちの安全を脅かすものとして。

けれど、今この2021年、1960年代や1990年代と異なるのは、私たちはテクノロジーを有しているのです、インターネットなどで世界とコミュニケートできるのです。私たちは今こそそれを使うべきです」

そして彼女は「Say "No" to MILITARY COUP. Let's Start CIVIL DISOBEDIENCE MOVEMENT(軍隊の一撃に“ノー”を。さあ、市民の抵抗運動を始めましょう)」と題したオンラインの運動を拡散。「今できることは”ステイホーム”ですべて可能です。全世界がロックダウン中にしてきたことと同じです」と、Facebook上で静かなる市民の蜂起を求めた。
このオンラインサイトはすでに14万近くもの賛同者を集めている。

Facebook上で広がり始めた市民の抵抗運動。あっという間に拡散され、2日夜時点で14万近くもの賛同を得ている(写真:Facebookより)

静かな抵抗を示す市民たち

そして2月2日夜。SNS上には、ミャンマー人たちが国軍の動きへの反抗を示す連帯として、鍋やフライパンなどを自宅の窓から叩き合う動画が溢れ始めた。外出して大規模な抗議運動などを行うことが難しい中、平和裏な方法で静かな抵抗を示す市民の動きが急速に拡散している。

コロナ対応で世界各国が手一杯のなか、にわかにトップニュースに躍り出たミャンマーでの大きな動き。過去のさまざまな経験から、これが一過性の注目に終わってしまうことを認識している現地の若者たちが、SNSという武器を手に、自ら世界に向けて絶え間なく発信し続けていこうとする信念を固くしているように見える。

海野 麻実 記者、映像ディレクター

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うんの あさみ / Asami Unno

東京都出身。2003年慶應義塾大学卒、国際ジャーナリズム専攻。”ニュースの国際流通の規定要因分析”等を手掛ける。卒業後、民放テレビ局入社。報道局社会部記者を経たのち、報道情報番組などでディレクターを務める。福島第一原発作業員を長期取材した、FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品『1F作業員~福島第一原発を追った900日』を制作。退社後は、東洋経済オンラインやYahoo!Japan、Forbesなどの他、NHK Worldなど複数の媒体で、執筆、動画制作を行う。取材テーマは、主に国際情勢を中心に、難民・移民政策、テロ対策、民族・宗教問題、エネルギー関連など。現在は東南アジアを拠点に海外でルポ取材を続け、撮影、編集まで手掛ける。取材や旅行で訪れた国はヨーロッパ、中東、アフリカ、南米など約40カ国。

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