さらに、脱炭素の流れの中で、オーストラリアはLNGに加えて「水素」にも力を入れる。オーストラリア政府は2019年11月に「国家水素戦略」を策定。太陽光、風力など再エネで電力を作り、グリーン水素を製造して輸出する戦略だ。褐炭から水素を作り、発生する二酸化炭素を地下に圧入・貯留(CCS)するブルー水素の輸出も「戦略」に言及がある。2020年5月には水素産業支援の3億豪ドル(約200憶円)のファンド設立も発表された。
水素は天然には存在せず、太陽光、風力、褐炭、天然ガスなどから作る必要がある2次エネルギーだ。水素還元製鉄や燃料電池自動車(FCV)など水素の利用法も重要だが、温室効果ガスを出さない安価な水素が前提となる。競争力のあるオーストラリアの再エネで安価に水素が作れれば(あるいは褐炭などからCCS込みで安価に水素が作れれば)、大量輸送した水素が日本の脱炭素を助ける可能性がある。
実際に、オーストラリアのAGLエナジーと日本の川崎重工業、電源開発、岩谷産業、丸紅の4社は褐炭水素パイロット実証プロジェクトをビクトリア州で2018年より開始。
岩谷産業は、オーストラリア電力会社のStanwellと再エネ由来のグリーン水素の製造・液化・輸入事業に向けた検討を2020年11月に公表。三菱重工業も2020年11月に水素やアンモニアを製造するオーストラリア企業への出資を公表した。また住友商事は日揮と組んで小型水電解装置を開発し2023年までにオーストラリアでグリーン水素生産のため稼働を目指す。さらに、インペックスはダーウィンで太陽光からの水素生成の有効性検証を開始している。
日豪米の協力の重要性
安全保障もエネルギーも、日本とオーストラリア、そしてアメリカの協力がカギだ。
日豪米は共同軍事訓練を頻繁に実施し、2020年11月にはこれにインドを加えた海上合同演習「マラバール」が行われた。また2020年11月にモリソン首相の訪日時に「円滑化協定」(Reciprocal Access Agreement)に大筋合意、日豪は「準同盟」の関係を深めている。
エネルギーも、「水素」が正解かは競争力次第だが、自国で閉じずにオーストラリアと協力することで水素の可能性は高まる。2020年11月の日豪首脳会談では「水素エネルギーの協力推進」で合意した。
また、脱炭素、電動化はレアアースの需要を増やすところ、中国への過度なレアアース依存の解消のための日豪米協力も重要だ。オーストラリアのライナス社は、アメリカ国防総省との間でテキサス州のレアアース分離施設に関する検討を進めている。こうした動きは重要物資のサプライチェーン強化という観点で大切だ。
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