日豪米の協力強化が一段と求められている事情 豪州ダーウィンから見た安全保障とエネルギー

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2013年9月に保守連合のアボット首相となり、アメリカ海兵隊の人数は1100人に増え、国防費も増額。中国の南シナ海の埋め立てを批判した。2015年9月には同じ保守連合のターンブル首相に交代。リベラルと目されていたが、対中傾斜はせず、国防費もGDP比2%まで増加させた。2018年8月には現在のモリソン首相(保守連合)体制となり、2019年にはアメリカ海兵隊は当初予定の2500人に到達した。

順調に見えるアメリカ海兵隊基地だが、過去には問題もあった。港を発展の核としたい北部準州はダーウィン港の商業港湾施設の民間資金での開発を計画。中国企業「嵐橋集団」(のオーストラリア子会社)が選定され、2015年10月に約5億豪ドルで99年間のリース契約を締結したのだ。

嵐橋集団トップの葉成氏は人民政治協商会議の委員。契約締結前にオーストラリア連邦政府の外国投資審査委員会(FIRB)に照会したが、民間や州政府の取引は対象外で正式審査は実施されなかった。

オバマ大統領は2015年11月に「事前に相談すべきであった」とターンブル首相に不満を表明。オーストラリア国内での批判もあり、その後、重要インフラは連邦政府の承認が必要とルール変更された。

エネルギーとLNG基地

日豪米の関係を考える際にはエネルギーも外せない。石炭とLNGでオーストラリアの輸出総額のおよそ4分の1を占める。オーストラリアは世界最大のLNG輸出国で2020年の輸出は7800万トン。最大の輸出先は日本で3030万トンだが、近年中国向けが急増、2020年は2960万トンと日本とほぼ同規模となった。

アメリカはシェールガスが牽引して世界最大のガス生産国となった。LNG輸出はオーストラリアより小さいが、2025年頃にカタール、オーストラリアを抜きアメリカが世界最大のLNG輸出国になるとの予測もある。

LNG輸出で競合する米豪だが、市場に基づき民間が主導するという共通の原則に基づいており、また、インド太平洋のLNG市場育成のためにLNG受け入れ基地等のインフラ整備を日豪米で協調するなど、協力関係にもある。

オーストラリアのLNGプロジェクトのほとんどに日本企業が関与している。このうち、ダーウィンLNGと、イクシスLNGは、液化基地がダーウィン陸上にある。イクシスは日本のインペックス(国際石油開発帝石)がオペレーターを務め、2018年11月に安倍首相が生産開始記念式典に参加している。

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