冨山和彦「江副リクルートは、日本の宝だった」 1980年代から「21世紀型の経営」を実現していた

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リクルートは「日本では極めて珍しいタイプの会社」だったという(写真提供:経営共創基盤)
「リクルートは日本の宝だ」
2003年から4年間、産業再生機構の業務執行最高責任者(COO)としてダイエー再建に携わった冨山和彦氏(現IGPIグループ会長)は、ダイエー傘下だったリクルートの経営と財務を調べてそう思ったという。
かねて「21世紀型の経営をしていた江副浩正氏を再評価すべき」と主張してきた冨山氏に、『起業の天才! 江副浩正 8兆円企業リクルートをつくった男』を上梓した大西康之氏が話を聞いた。

80年代から「21世紀型の経営」をしていたリクルート

――ご自身も日本初の独立系コンサルティング会社、コーポレイト ディレクション(CDI)の起業に関わった冨山さんから見て、起業家・江副浩正とはどんな人物ですか。

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実は1986年にボストンコンサルティンググループ(BCG)のメンバー10人でCDIを設立するとき、出資をしてくれたのが江副さん時代のリクルートなんです。正確に言うと江副さんのリクルートと宮内義彦さんのオリックス、あとはBCGのお客さんだった東京ガスと大阪ガスが最初の大口出資者です。

日本ではまだコンサルティング・ファームの認知度が高くない時代でしたが、若いコンサルタントたちが立ち上げた「紙と鉛筆の会社」を面白がって出資してくれたのが江副さんと宮内さんです。コンサルという質量のないビジネスに価値を認めたのがこの2人だった。これは、その後の日本を象徴する気もします。

『起業の天才!』を読んで初めて知ったのですが、江副さんはジェフ・ベゾスが新卒で入社したベンチャー企業を買収していたので、リクルート事件がなかったらCDIも買収していたかもしれません。そうなっていたら、僕も江副さんの部下になって、ベゾスと同僚というわけです。

――当時、リクルートという会社は冨山さんの目にどう映りましたか。

年功序列が一切なく、仕事ができるかどうかですべてが決まる、日本では極めて珍しいタイプの会社でした。利益を出すことに対する社員の執念がすごかった。社員全員が、「情報」という原価のないサービスをいかに高く売るかを必死に考えていましたね。

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