東京の地元飲食店を束ねて救う「助っ人」の正体 IT系でもない城南信金がサイトを立ち上げた訳

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だが、全業種の倒産件数とは裏腹に、きわだったのが飲食業だった。2020年の飲食業の倒産件数は810件(前年比1.3%)で過去最多となったのだ。

さらに見落とせない現実がある。帝国データバンクが東京都内に本店を置く23の信用金庫を対象に2020年3月末から同年9月末までの貸出金、預金残高を調査した結果だ。

23信用金庫の2020年9月末の貸出金残高の合計は15兆2541億7100万円で、同年3月末の14兆481億5100万円から半年間で1兆2060億2000万円(8.58%)増加していた。

一方の預金残高は、2020年9月末時点の合計が27兆6739億4100万円で、同年3月末の25兆5090億8600万円から2兆1648億5500万円(8.49%)も増加している。

つまり、政府の働きかけで金融機関が大胆に融資を実行してきたにもかかわらず、その大半は預金に回ってしまっているのだ。

他方、城南信金には昨年末から「資金繰りがもう限界。コロナ融資をもう一度、お願いできないか」といった相談が飲食業者からくるようになった。「金余り」と「資金不足」の両極端が起きている。

融資だけでは時間稼ぎ、本業支援が必要

城南信金が飲食業の本業支援に乗り出したのは、こうした背景がある。

城南信金の川本恭治理事長は「融資だけでは時間稼ぎに終わることがわかった。本業の支援をしなければ根本的な解決策にはならない」と、飲食業支援サイトを立ち上げた理由を語る。

おりしも菅義偉政権は地域金融機関の再編を打ち出す。目玉は地方銀行だが、議論は信用金庫の再編話にも飛び火している。川本理事長は「今、地域のためにしっかり汗をかけるかどうか。飲食業者だけでなく、われわれも試されている」と覚悟をみせる。

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当初、2月7日までとされた緊急事態宣言は10都府県で3月7日までの延長が決まった。飲食業者の倒産件数はさらに増えるだろう。地域経済を縁の下で支えてきた信用金庫の、存在感の見せどころ。この取り組みのさらなる広がりが、困窮する地域の飲食店を支援する一助となる。

複数客で飲食店を訪れて店内で飲食するのははばかられるが、テイクアウトやデリバリーならなんの気兼ねもない。リモートワークの息抜きに散歩がてらに、地元の飲食店を支援する輪が一般の人にも広がればなおいい。

野中 大樹 東洋経済 記者

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のなか だいき / Daiki Nonaka

熊本県生まれ。週刊誌記者を経て2018年に東洋経済新報社入社。週刊東洋経済編集部。

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