日本でいち早く、2月下旬に医療従事者から接種開始が予定されているのは、ファイザー製ワクチンだ。政府がワクチン供給契約を結んだ3社の計3億1400万回分のうち、半数近い1億4400万回分を占める。その「100万接種に5例」というアナフィラキシー発生頻度をどう考えるべきか。
例えば、医療関係者に続く優先接種となる高齢者(65歳以上)で考えた場合、仮に接種率80%だったとすると、ちょうど東京都・神奈川県・茨城県の3都県で1人発生するレベルだ。発生しないに越したことはないが、それほど多くもない印象ではないだろうか。
他のワクチンならどうか。CDCによると、インフルエンザワクチンによるアナフィラキシーは、接種100万回あたり1.3例(0.00013%)だ。その他、従来の各感染症ワクチンでは、アナフィラキシーは100万回に1例程度との研究もある。それに比べると、たしかに新型コロナワクチンは2.8~5倍アナフィラキシーを引き起こしやすいと言える。
だが、アナフィラキシー自体は、ハチ刺されや食物アレルギーなどによって、国内でももっと頻発している。
「アナフィラキシーガイドライン」(日本アレルギー学会)によれば、ハチ毒過敏症状は、日本のある地方圏では人口の約300人に1人、林野部で仕事に従事する人の約10~40%に上る。また、東京都の報告(2015年東京都健康安全研究センター「アレルギー疾患に関する施設調査」による)では、全保育施設(保育園・幼稚園等)の約4%で、1年間に食物アレルギーによるアナフィラキシーが発生している。いずれも、どんなワクチンよりもはるかに高頻度だ。
副反応の原因がワクチンとは限らない
また、ワクチンの安全性の判断は、アナフィラキシーだけでなく副反応の全体像に基づいたうえで、有害事象(ワクチン以外の原因も含む接種後のすべての体調不良)とは明確に区別して考える必要がある。一見重い副反応に見えても、実際にはワクチンによらない場合もあるのだ。
新型コロナワクチンでも、HPVワクチンで問題になった「血管迷走神経反射」(注射の痛みによって自律神経の働きが変わり、血圧が低下し、まれに失神などの症状を招くもの)や、「不安神経症」により体調を崩した例が出ている。有害事象の典型だ。
ほかにもさまざまな有害事象が報告されている。深刻でない有害事象は100万接種あたり372例(0.0372%)となっている。生活に支障が出る場合もあるが、数日しか続かないようなものは、深刻とは見なされない。一方、深刻な有害事象も100万接種当たり45例(0.0045%)の割合だ。
さて、そうした有害事象全体から見れば、アナフィラキシーの占める割合は、ファイザー製で21/7307=約0.287%、モデルナ製では10/1786=約0.560%にすぎない。接種後のアナフィラキシーが相次いで報告された後でも、アメリカ食品医薬品局(FDA)がファイザー製ワクチンを正式に承認したのも理解できる。アナフィラキシーは取り立てて警戒するほどの頻度ではない、ということだ。
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