新型コロナ「ワクチン」本当はどの程度怖いのか アナフィラキシー発生頻度は「100万接種に5例」

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むしろ心配なのは、血管迷走神経反射のほうかもしれない。というのも、今回の新型コロナワクチンは、筋肉注射となる見込みだからだ。

腕の皮をちょっとつまんで斜めに浅く針を刺す皮下注射とは違い、筋肉注射では、より長い針を使って腕に垂直に、文字通り「突き刺す」格好だ。

日本人は筋肉注射の経験のない人が圧倒的に多く、視覚的にも刺激が強い。筋線維を押し分けて液体を注入することで、極小の肉離れのような状態になる。また、筋肉の中には神経のセンサーも多く、近くに注入された薬液の刺激が痛みを起こすこともある。いずれにしても痛みは主観的なものであり、人によって感じ方が大きく異なる。

ワクチンの副反応の報道が広まったことで、漠然とした不安を抱えて接種に臨む人もいるだろう。そこに慣れない筋肉注射から来る恐怖心や痛みで、HPVワクチン同様、血管迷走神経反射による失神等が発生しかねない。接種会場でその状況を目の当たりにすれば、不安が不安を呼ぶ。

筋肉注射と皮下注射の違いは?

実は、筋肉注射と皮下注射の使い分けには明確な規定等があるわけではない。それどころか、世界のスタンダードは筋肉注射だ。海外の複数の研究で、筋肉注射によるワクチン接種は皮下注射に比べて、

① 局所反応(赤み、腫れ、痛み)が少ない

② 抗体のつきやすさは優る

と報告されている。私は、自分へのインフルエンザワクチンは皮下注射でなく、筋肉注射でおこなっている。筋肉注射のほうが不快症状の少ないことを、身をもって知っているからだ。

そもそも日本で筋肉注射が行われなくなった理由は、1973~1975年に、風邪に対する太ももへの筋肉注射治療(当時よく行われていたが、そもそも風邪治療効果は認められない)で、副反応が問題化したことだ。

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筋肉が拘縮し(動かしにくくなった状態)歩けなくなった子どもたちが、全国で3700人近く確認された。日本小児科学会も調査を行い、注射の濫用が原因であるとした後、改めて「筋肉注射に関する提言」(1976年)とその解説(1978年)を発表した。ただ、抗生剤などが組織を障害した可能性は指摘されたものの、筋肉注射そのものが拘縮につながるとの証明はなかった。

それでも「筋肉注射は避けるべき」という結論だけが、医師の間で広く共有された。風邪での解熱剤や抗生剤の投与はほとんどが飲み薬へ、注射という注射がいっせいに皮下注射へと置き換えられた。

以上を踏まえてはっきり言えば、筋肉注射に関しては、まったく心配いらない。むしろ局所的な副反応は小さく済むと期待できる。さらに言えば、海外の臨床試験で筋肉注射によって出されたのと同じ効果を期待するなら、日本でも筋肉注射とするのが望ましい。

恐怖心が有害事象を生むこともある。ちょっとした痛みを覚悟したうえで、安心して接種を受けていただきたい。

久住 英二 内科医・血液専門医

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くすみ えいじ / Eiji Kusumi

1999年新潟大学医学部卒業。内科医、とくに血液内科と旅行医学が専門。虎の門病院で初期研修ののち、白血病など血液のがんを治療する専門医を取得。血液の病気をはじめ、感染症やワクチン、海外での病気にも詳しい。

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