黒船前夜 渡辺京二著

黒船前夜 渡辺京二著

千島列島、サハリン、蝦夷(えぞ)という未開の地を舞台にした、ロシアとアイヌ、幕末日本、三者三様の思惑と行動を丹念にたどった力作である。ロシアは日露通商の道を探り、アイヌは恬淡(てんたん)と自活の道を求め、松前藩と幕府は穏便な鎖国策で済ませようとする。満足な地図もなく厳しい自然条件のもとでの手探りの航海と怪しげな通訳によって、異文化理解が深まっていく過程が伸びやかな史観によって浮かび上がる。

ロシアの船長たちもなかなかに個性的だが、日本人も捨てたものではない。中でも蝦夷政策で老中へ大胆な提言をした河尻春之、荒尾成章など幕僚たちの志と気骨、潔くロシア船に捕らわれた豪商・高田屋嘉兵衛の豪胆ぶりな魅力など、幕末には現代より人物がいたと知る。レザーノフの駆け引きやゴローブニンの幽囚を書いた終章も日露前史として興趣が尽きない。外交のあるべき姿を考え、北方領土の歴史を知るうえでも役に立つ。(純)

洋泉社 3045円

  

ライフの人気記事
トピックボードAD
関連記事
  • ブックス・レビュー
  • 北朝鮮ニュース
  • 食べれば世界がわかる!カレー経済圏
  • 日本野球の今そこにある危機
トレンドライブラリーAD
  • コメント
  • facebook
0/400

コメント投稿に関する規則(ガイドライン)を遵守し、内容に責任をもってご投稿ください。

アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
トレンドウォッチAD
進撃の商社<br>純利益1兆円への野望

資源価格の反発で総合商社の業績は絶好調、非資源での新規ビジネス創出にも余念がない。純利益1兆円突破への期待も出てきた今、商社の実力を総点検する。5大商社のトップがそろい踏み、「人材編」にはイラストで各社のキャラ解説も。