積水ハウス揺るがす子会社「不透明取引」の異様 前社長自らオーナー所有のマンションを購入

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――自社管理物件の購入は問題がないのか。

前社長 (オーナーが)売りたいと言うので担当者が査定して、それを売りに出していて、一定期間売りに出ていた。それが売れていないということで、(前社長が買うのは)どうだという情報が入った。担当者がちゃんと査定したものを一回売りに出していて、たまたま売れていない状態の中で情報を得て買っているので(問題ない)。しかも、購入したのは個人ではなく会社だ。

――会社といっても、あなたの親族が役員を務める有限会社だ。

前社長 それはそうだが……。

――静岡の沼津市では社員が提訴されている。

前社長 彼のケースでは、自分が担当する物件で、それを直接買っている。査定はしているが、彼が購入するときに(仲介)手数料を払わずに買っている。直接担当者だったものを自分で買っているところは問題。(購入価格に)本当に客観的なデータが出ていたのか、そういうところが指摘されているのだと思う。

――自社管理物件の購入はコンプライアンス上問題があると、会社が認めている。

前社長 仲介なり(に出て)、一回公開されているものは誰が買ってもいいのではないか。内々でやりとりしてしまうと、客観性のある価格なのかという問題はあると思う。それを出さないで内々でやってしまうと客観性に疑問符がついてしまうが、買ってはダメというところまでは言えないのではないかと思う。

狂ったコンプライアンス意識

だが、同社関係者は「前社長も自身の関係会社に自社が管理する物件を買い取らせていた。社員のコンプライアンス意識もおかしくなっている。入居やリフォームの状況など、管理会社の社員は物件に精通しており、自社管理物件を買うのは株式の売買にたとえると『インサイダー取引』のようなもの。公正さを疑われることになりかねず違和感がある」と首をかしげる。

積水ハウス不動産中部は取材に対して、個別の問題には答えられないとしたうえで、以下のようにコメントした。

「裁判に関わる件につきましては、係争中のため、詳しくはお答えしかねますが、当該取引の経緯および価格につきましては、適正なものであると考えております。その他の、オーナー様の資産に関する社員とオーナー様との取引につきましても、適正なものであると考えております。ただし、第三者からの誤解を生じさせないよう、現在は、オーナー様の資産に関する社員とオーナー様との取引は原則禁止とし、実施する場合は稟議等で確認する体制を整えております」

【情報提供のお願い】東洋経済では、マンションやアパート運営に関する課題を継続的に取り上げていきます。こちらのフォームへ、情報提供をお待ちしております。
森 創一郎 東洋経済 記者

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もり そういちろう / Soichiro Mori

1972年東京生まれ。学習院大学大学院人文科学研究科修了。出版社、雑誌社、フリー記者を経て2006年から北海道放送記者。2020年7月から東洋経済記者。

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