積水ハウス揺るがす子会社「不透明取引」の異様 前社長自らオーナー所有のマンションを購入
訴状や不動産登記簿などによると、物件は軽量鉄骨造の2階建てアパート18戸で、1997年に新築された。当時90歳のオーナーは2016年12月にこのアパートを営業所長に売却している。
所長はオーナーから7500万円で購入したが、原告のオーナー側は約1億1400万円の価値があったと主張する。
オーナー側が「鑑定士による客観的な価格」としているのに対し、被告側は「原告側の価額は更地としての評価額であり、社内で査定した結果、価格は適正」「物件の売却は地元の銀行とトラブルとなったオーナー側から持ち掛けられた。売却を思いとどまるよう説得したが、やむなく物件の購入に至った」との趣旨を主張し、反論している。
会社は「問題取引」だと認めていた
これに対して、オーナーを知る原告側関係者は「(オーナーが)そもそも銀行とトラブルになっていたとは聞いていない。亡くなったオーナーは言われれば何でもハンコをつくような人で、家族からも気をつけてと言われていた。被告の購入価格はありえない価格で、物件をだましとられたことは明らか」と言う。
サブリース被害対策弁護団の三浦直樹弁護士は、「個人がどんな不動産を売買するかはもちろん自由だが、手の内を知り尽くした自社関与の物件となると、売買価格は客観的で適正なのか、売主のオーナーは売買の内容について明確な認識と判断力をもっているのかが問われる。きちんとした説明もせず、認知能力に問題のあるオーナーから物件をだまし取るようなことをすれば、当然、詐欺の不法行為になる」と指摘する。
実はこの沼津市内のケースについては、積水ハウス不動産中部自身が売買に問題があったことを内々に認めている。
2020年5月に社長ら幹部らの連名で出された社内文書「社員の不動産購入について」では、「当社社員が業務上関与した収益物件を購入し、当社が訴訟提起されるという事案が発生しております」としたうえで、「本事案は、①会社の承認手続きを経ていない、②査定が当社だけで客観的根拠が弱い、③当社所定の仲介手数料を支払っていない等の問題があり、会社の信用問題にも発展しかねません。また、他の社員においても類似のケースがあるとの報告を受けております」としている。
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