「戸籍上はまだ存命」130歳祖父からの衝撃相続 突然送られてきた手紙、血縁とは何なのか
携帯電話の番号を書き添え、連絡がほしいと結んだその手紙に、すぐに返答をくれたのは、祖父の長女の長女。私の母の年齢に迫る最年長のいとこB子からだった。
緊張の挨拶の後、聞かされたのは祖父と父の哀れな生涯だった。祖父は生前、莫大な財を成したものの、早逝した祖母や娘たちに厳しくあたり、みんな祖父を嫌っていたという。
娘達はさっさと結婚し家を出て、その後のことなどまったく知らない。おそらく誰も祖父を看取った者もいないと平然と言ってのけた。
そして「お金はきっと、あなたのお父さんが全部使い果たしたはずよ。1人息子をかわいがって、あの家でずっと父子で暮らしていたから」と付け加えた。
10年前に死んだという父の話を聞くと「内縁の妻がいたようだった」としか教えてもらえなかった。母が離婚した背景まで透けて見えそうだった。
B子は年長者の責任からか、瞬く間にほかのいとこ達へ連絡をとってくれた。中には「あんたの父親だけが可愛がられていた」「今さら親族だなんて言われてもねぇ」と嫌味を言う者もいたが、相続人全員の協力がなければ、不動産を売却できないことを告げると押し黙った。
隣人から突き付けられた「親族の恥部」
その間、弁護士は失踪宣告申立の手続きを進めてくれた。代襲相続人である孫の私が、祖父の最後の住所地である福岡の家庭裁判所へ失踪宣告を申し立てた。
受理されれば祖父の調査が行われ、その後、生存の届出が催告される(期間は3カ月以上で裁判所が設定)。
所定の手続きに時間を要する間、私は迷惑をかけた隣人に謝罪するために、福岡へ飛んだ。スマートフォンの地図アプリを頼りに現地までたどり着くと、そこには、かつて栄華を極めたであろう巨大な屋敷が朽ち果てて、不気味な姿で残存していた。
崩れてきた石垣を避けるために、隣地では急ごしらえの柵が設けてあった。平身低頭謝罪する私に、対応してくれた高齢の女性は、亡くなった方を悪く言うのはいけないけれど、と前置きしたうえで話し始めた。
おばあ様が早くに亡くなってからは、おじい様とお父様は、ゴミ出しルールも守らない、子ども達が遊んでいると大声で怒鳴りつける。
お父様はお勤めもしてなかったはずですよ。毎日毎日、辺りをブラブラしてね。近所付き合いもなかったお二人が、いつ亡くなったかさえ知りません。それに娘さん達もあんまりですよね。父親と弟の存在を完全に無視して……
自分の知らない親族の恥部を初見の隣人に突かれ、いたたまれない気持ちに襲われた私は、ただただ謝り続けるしかなかった。