「戸籍上はまだ存命」130歳祖父からの衝撃相続 突然送られてきた手紙、血縁とは何なのか

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その足で弁護士を訪問。何度も電話ではやり取りをしてきたが、初めての面談だ。隣人に謝罪してきた旨を報告すると「お隣さんには、長年思うところがあったんでしょうが、Aさんの謝罪はきっと届きましたからね」と、暗い表情の私を気遣ってくれた。

それから催告期間が満了し、無事に祖父の失踪宣告の審判が確定した。この確定証明を市役所に提出、受理された祖父は「本当に死んだ」。

祖父の戸籍には次のように記載された。

平成●年●月●日死亡とみなされる平成〇年〇月〇日失踪宣告の裁判確定同月◎日孫A(私の氏名)届出除籍

最期まで生活を共にした1人息子である私の父に、死亡届さえ出してもらえなかった祖父の生涯の幕引きを、顔も知らない孫の私がしてしまったのだ。

祖父の死亡によって、代襲相続人である孫世代の21人のいとこ達による相続が始まった。まず、3000万円で購入するという不動産業者の買付証明書が提示された。

そこから、相続登記にかかる司法書士の費用、建物や塀の解体費用、弁護士・裁判費用、不動産業者への手数料等の経費を差し引いた金額は、約2500万円。祖父の子ども一人当たりの相続分は約420万円にもなった。

これを代襲相続人の孫たちが、きょうだいの数で分けることになり、私は1人っ子なので満額を1人で相続することになった。

お金は入ったけど「家族とは何なのか」

形式上、遺産分割協議は成立したものの、これを良く思わない者がいることは明白だった。先んじて私は「長年迷惑をかけたお隣さんへの謝罪は、私の相続分から出します」と申し出た。

「そりゃそうだよ、あんたの親父が、じいさんの財産を食いつぶしたんだから」。いとこ達の当然の本音だった。

思いもよらない大金を相続したが、私の疲弊した心はしばらく回復しそうになかった。「これを機に仲よくなれるかもしれない」と淡い期待を抱いたが、いとこ達は相続分を受け取ると、一切連絡もくれなくなった。

齢60を超え、これまで知らなかった出自を目の当たりにし、家族とは、血縁とは何なのだろうという疑問が頭をもたげた。

「失踪宣告」という法制度に頼らなければ、死ぬことさえできなかった顔も知らない祖父を想い、涙が止まらなくなった。

※1【失踪宣告】
不在者(従来の住所又は居所を去り、容易に戻る見込みのない者)について、その生死が7年間明らかでないとき(普通失踪)、または戦争、船舶の沈没、震災などの死亡の原因となる危難に遭遇しその危難が去った後その生死が1年間明らかでないとき(危難失踪)にとることができる手続き。
申し立てることができるのは、不在者の配偶者、相続人にあたる者、財産管理人、受遺者など法律上の利害関係を有する者。不在者の従来の住所地または居所地の家庭裁判所家庭裁判所に申し立て、審判が確定すれば、生死不明の者に対して、法律上死亡したものとみなす効果を生じさせる制度である。
※2【職権消除】
市町村において、税務や保健等の連絡に要する郵便不達や臨戸訪問によって居住が不明な者について、情報提供や、同居する家族、家屋管理人、町内会長などからの申出により住民窓口課が実態調査を行い、居住の実態がないと判断した時に行われる住民票の消除をいう。
そのほか転入通知未着による職権消除もある。この制度の意義は、本来ならば、届出義務者がしなければならない転入、転出、転居届等を怠っていることによって住民基本台帳と実態が一致していない状態を、職権により住民票を消除することで、住民基本台帳と実態を一致させ、住民票の正確性を保つことにある。

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