寂しい最期「ムーンライトながら」役割終え廃止 郷愁を誘う夜行列車、でも乗るかといえば…

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

近年、「青春18きっぷ」のシーズンになると旅行雑誌やムックで「大人の青春18きっぷ」などと題されたものを見る機会も多いのではないか。筆者の知る高齢者でも、この切符をよく利用する人がいる。

「青春18きっぷ」で、元は取るものの限界までその「能力」を引き出さない、という人がこのあたりの利用者の特徴だ。当初ターゲットとしていた層から幅広い層に利用が拡大していく中で、6時間以上のハードな乗車を必要とする「ムーンライトながら」は、高齢の利用者には避けられた。また、若き日から「青春18きっぷ」を愛用していた層も、年齢層がじわじわと高くなり、翌日に疲れの残る「ムーンライトながら」は敬遠されるようになった。かつては夜行列車に乗る前の定番だった銭湯も減っている。

こうして、安さを求める若い層はバスへ流れ、若かりし日に愛用した人々や高齢の「青春18きっぷ」利用者は夜行を避けるようになり、「ムーンライトながら」は運行日を減らしていった。

車両代替でついに幕切れ

車両の老朽化も進んだ。2009年の臨時列車化以降は183系・189系特急型電車を使っていたが、2013年冬の運行からはやや新しい、特急「踊り子」などに使っている185系特急型電車に変わった。

2013年から「ムーンライトながら」に使われていた185系特急型電車。2021年3月で引退する予定だ(写真:Jun Kaida/PIXTA)

しかしこれも国鉄時代からの車両であり、老朽化は目に見える状況になっていた。JR東日本は185系を引退させる方針を打ち出し、「踊り子」の代替にはこれまで中央本線などで走っていたE257系特急型電車を充てることにした。

このE257系は、伊豆急下田行の9両編成と、修善寺行きの5両編成の組み合わせとなっているが、JR東海区間に入れるのは修善寺行きの5両編成だけとなっている。5両編成を2本つなげば「ムーンライトながら」は運行できるとも考えられるが、5両編成はトータルで4本の導入予定となっている。これでは、もし「ムーンライト」にこの車両を使ってしまうと、修善寺行き「踊り子」が運行できない。

車両は老朽化し、利用する人も減った。そしてコロナ禍で「コミックマーケット」などの大規模イベントは中止となり、列車自体も運行できなくなった。そんな中で「列車の使命が薄れてきた」というのは、率直なところであろう。

多くの人が郷愁とともに「ムーンライトながら」を愛しているが、郷愁を抱くだけで実際には乗ることはない、乗り通す体力もない(筆者も自信がない)という状況になっている。加えて若い一般層の長距離移動の利用の変化や、コロナ禍による移動の減少がある。

こういった状況から、「ムーンライトながら」の廃止は以前から予測できることだった。長距離の格安移動手段として存在意義があるということから残り続けたものの、もはやその理由もなくなってしまった。そして、使用できる車両もなくなった。

私たちは、この列車がいままで生き残り続けたことに感謝するしかない。

小林 拓矢 フリーライター

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

こばやし たくや / Takuya Kobayashi

1979年山梨県甲府市生まれ。早稲田大学卒。在学時は鉄道研究会に在籍。鉄道・時事その他について執筆。著書は『早大を出た僕が入った3つの企業は、すべてブラックでした』(講談社)。また ニッポン鉄道旅行研究会『週末鉄道旅行』(宝島社新書)に執筆参加。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
鉄道最前線の人気記事