非正規の母が悲鳴上げる「助成金問題」の理不尽

「企業単位でのみ申請可能」が引き起こす大問題

都道府県の労働局に助成金の特別相談窓口が設置されているが、労働局が会社に連絡をとることで会社との関係が悪化することを恐れて相談すらできない人は少なくない。

休校中は日々の生活に精一杯。学校が再開して日常が戻っていくと杏子さんはだんだんと「テレビで見た記者会見で、安倍総理(当時)は働く親を支援すると言っていたはず」と、助成金が使えないことに強い疑問を抱くようになった。労働組合や自治体議員などに相談するうち、匿名のTwitterアカウントで同じ境遇にある人に呼びかけて6月からツイッター運動を行った。

杏子さんは当事者とその家族のグループ「小学校休業等対応助成金の個人申請を求める親の会」を作り、助成金の個人申請の実現に向けて国会議員にも働きかけている。運動を通して知り合ったなかには、やむをえず家に幼い子どもだけを残して仕事に出た親も少なくなかった。

有給休暇を使い切り、夏休みは子どもと遊ぶ時間もなく働き詰めとなって、授業参観に行くための休暇もとることができなくなった母親もいる。このような状況について杏子さんは、憤りを感じている。

「特別休暇を作るのは企業にとって手続きが煩雑で、多くのケースで『あなたのためだけに手間をさけない』と言われてしまいます。事務員がいないような小さな会社にはハードルが高い。これは単に助成金が受けられないというだけの問題ではなく、弱い立場の非正規雇用や子育て中の女性を取り巻く問題そのもの。政治に無関心ではいられなくなりました」

条件つきで3月まで延長されたものの…

2020年9月までの休業分の助成金申請は当初、12月28日が申請期限だった。このまま泣き寝入りはできないと杏子さんは、期間延長と個人申請を求める署名活動を行い、12月10~17日で集めた約1500筆を持って12月17日、三原じゅん子・厚生労働副大臣のもとを訪れ、陳情した。その翌日、条件付きではあるが今年3月末まで申請期間が延長された。

個人申請の可否について、厚生労働省の担当者は「この助成金はあくまでコロナの影響で小学校などが休みになった場合に、労働者に年次有給休暇とは別に有給休暇を取得できる仕組みを作り、雇用維持を行った事業者に対する助成。現時点(1月19日)で個人申請になるかどうかは答えられない」としている。

同助成金は、単年度の予算として2019年度で1556億円、2020年度の第一次補正予算で1673億円、同第二次補正予算で46億円がそれぞれ計上されている。申請状況を見ると、2020年2月からの約1年間の累計で申請件数は約15万7600件、支給決定数は約13万件で支給金額は390億2000万円に留まる(1月15日現在)。

杏子さんら親の会は「勤め先から『助成金を使わない』と言われた時の救済策がない」と、個人申請の実現を切望している。通常国会が始まり、申請件数の実績の少なさからも助成金を使いやすい制度に変えるなどして救済する議論が進むことを期待したい。

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