非正規の母が悲鳴上げる「助成金問題」の理不尽

「企業単位でのみ申請可能」が引き起こす大問題

ただこれは、あくまで公費で運営される保育園だから実現したのかもしれない。たとえ強制できなくても認可保育園などの運営費は主に税金で賄われており、つねに自治体の監督下に置かれている。

自治体の保育課や監査部門が休業補償を徹底するよう指導や監査を強めていけば、多くはそれに従うだろう。しかし、一般の民間企業ではそうはいかない。労働局も助成金申請を企業に働きかけることはできるが強制はできず、企業が申請しないと言えばそれまでとなってしまうのが現状だ。

工場でパート勤務の女性からも悲鳴

中部地方にある町工場でパート勤務している秋野杏子さん(仮名、40歳)も、「小学校休業等対応助成金」を受け取れず、「こういう時、非正規雇用で働く女性がより一層、不利な立場になる」と強く感じた。

数年前から夫と別居中の杏子さんは、中学生の娘、小学3年生の息子と3人で暮らしている。息子が生まれるまでは、乳飲料の訪問販売をしていた。息子が1歳になってからは飲食店で働いたが、幼い頃は子どもがよく熱を出しては休む必要があり働き続けられなくなって、非正規雇用で職を転々とした。

「息子が3歳になってやっと拾ってもらえました」(杏子さん)という今の職場で働いて数年。子どもの急な体調不良にも理解があって休みやすい。夫は平均して月5万円の養育費を払ってはくれるものの、生活は杏子さんの収入にかかっている。時給は最低賃金と同額の852円で平日9時から16時まで工場の現場で働き、月収は11~12万円。祝日などがあって働く時間が減ると、とたんに家計は厳しくなる。

そうした日々のなかで突然訪れた昨春の小学校の一斉休校。杏子さんの父はすでに他界しており、母は遠方に住んでいるため、頼ることができない。中学生の娘は反抗期の真っ最中で、弟の面倒をみてとはいえない状態だった。応急的にできた小学校低学年向けの学童保育に預けたが、長椅子に一人ひとり座らせられ、会話をすると先生から怒鳴られると息子は訴えた。一日中ずっと座ってひたすら自習する環境。学童からの帰り道、息子が「もうイヤ」と泣き出した。

これでは学童に預けられないと、杏子さんは朝は普段どおり出勤するが、13時までに帰ってお昼ご飯を作り、子どもの勉強をみることにした。休校中の2020年3~5月の収入は半減した。

パート社員約10人中、小学生以下の子どもがいるのは3人。杏子さん以外は祖父母に預けるなどして出勤していた。会社に「小学校休業等対応助成金を使えないでしょうか」と杏子さんが尋ねると、「他のパート社員と不公平になる。あなたのためだけに申請はできない」と断られた。何度か申請をお願したが叶わず、「これ以上言って、人間関係が悪くなっては……」と、強くは言えなくなった。

「小学校休業等対応助成金」を申請する書類自体はさほど複雑なものではないが、助成金を申請するには、労働基準法が定める年次有給休暇の他に、有給の特別休暇の仕組みを作らなくてはならない。それがネックになり申請が進まない要因にもなっている。

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