非正規の母が悲鳴上げる「助成金問題」の理不尽 「企業単位でのみ申請可能」が引き起こす大問題

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「生活がかかっている」と、香織さんは祖母に小学生の子を見てもらって出勤した。5月に休んだ日はわずか数日ではあったが、その分は無給だった。

本来、香織さんが勤めるような認可保育園では、コロナの影響があったとしても国の配慮により運営費が満額支給されることから、人件費も満額支給するよう国から通知が出ていた。それでも香織さんの勤める園では給与を満額支給しなかったことから、香織さんは「小学校休業等対応助成金」を申請してはもらえないかと考えた。

同助成金は、①小学校などが臨時休業した場合、自治体や保育園などから利用を控えるよう依頼があったとき、②子どもがコロナに感染または感染の恐れがあって小学校等を休む必要があったとき、を対象として、子どもをみるため保護者が仕事を休んだ場合に受けられる休業補償だ。

事業者が労働基準法の年次有給休暇以外の有給の特別休暇を取得させる要件も満たせば、日額1万5000円を上限に(2020年3月31日までの休暇分は日額8330円が上限)、対象となる労働者に支払った賃金相当額が100%助成される。企業に勤める労働者は事業者が申請し、フリーランスは個人申請となる。

香織さんがこの助成金の活用を打診すると、認可保育園でも申請できるにもかかわらず園長は「コロナ禍で休園する日があっても運営費は普段どおり満額入っている。助成金の申請をすると公費の二重取りになるから申請はできない」と言って、取り合おうとしなかった。

「私はパートとはいえクラス担任を受け持っています。子どもからの飛沫感染リスクが避けられないなか、私たちは保育している。満額補償されていいはずの給与は払ってもらえず、それを、助成金の申請をして補填してほしいというのも叶わず。理不尽さを感じます。助成金活用は正当な権利のはずです」

そう思い、香織さんは交渉を続けた。それでも園長は「これから(国などから支給される)運営費が減らされるかもしれない。小学校が休校になって欠勤するのは、子どもが風邪で休んだことと同じ。だから、それ以上の補償はしない」という一点張り。保育園を運営する社会福祉法人の理事長にまでかけあったが「いちいち対応していられない」と一蹴された。

めげずに申請を頼んでも園側の答えは「働かない日に給与分を受け取るのは、出勤した保育士と不平等になるからできない」だった。

自治体や議員にも相談したが…

納得いかない香織さんは自治体議員や自治体にも相談し、相談を受けた自治体側が理事長にヒアリングしたが、それでも理事長は申請しないという姿勢を崩さなかった。

香織さんは勤め先を辞めようか悩んだが、「法人だって保育士が辞めないようコロナの次の感染拡大に備えたほうがいいはず。ここできちんと声を上げなければ」と諦めず、内閣府にも電話をして相談。内閣府から自治体に連絡が入ったことが影響し、数カ月経ってようやく法人が助成金の申請をしたのだった。

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