「温水洗浄便座で洗いすぎのお尻」が大変なワケ 皮膚表面のバリア機能が失われている可能性

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皮脂膜がなくなると、皮膚の炎症がなかなか治まらず、ただれていきます。その結果、肛門周りに湿疹ができて真っ白になったり、炎症が慢性化・長期化して色素沈着が進み、皮膚が黒ずむこともあります。

さらに、メラノサイトというシミやホクロを作る細胞が活性化されて増殖するため、洗いすぎるとシミやホクロが増えたり、色素沈着を起こします。洗いすぎによる摩擦でプツプツ(稗粒腫)ができたり、乾燥を防ぐために過剰に皮脂が出てきてペタペタ・テカテカなお尻になったりするのです。

毎日、お尻を洗いすぎると、炎症が繰り返され、免疫力が低下した状態が続くため、皮膚組織から癌細胞が発生しやすくもなります。お尻のかゆみで悩まれていた患者さんが、実は皮膚癌だったというケースを何度も経験しました。

弊害が出始めたのは15年以上前のことですが、日本大腸肛門病学会で「温水便座症候群」という病名が提唱されました。これを受けて、医療の現場でも「お尻は洗いすぎないように」という指導方針に変わっています。

たかがお尻と思っていても、治らない症状や生死に関わる病気を発症してしまうことがあります。このようなお尻のトラブルを解消、予防するために、まずは以下のように「2週間、お尻を洗うのをやめてみる」ことが有効です。

  • ・温水洗浄便座の洗浄機能を使わない
  • ・お風呂で肛門に直接シャワーを当てない
  • ・せっけんやボディソープで肛門近くを洗わない
  • ・ボディスポンジやボディブラシ、タオルなどで肛門をゴシゴシこすらない
  •  

お風呂でのお尻の洗い方

お風呂でお尻を洗う場合は、手のひらでせっけんやボディソープを泡立てお尻(臀部)に優しくつけ(肛門にはつけない)、洗うときは手でお尻をなでるだけ。シャワーは、お腹や胸、背中、肩などに当てて流すだけで、お尻は十分キレイになります。

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皮膚科医としての経験と約10万人のお尻を診てきた経験から、ボロボロになった皮膚の炎症が治まり、皮膚が再生するのに必要な期間が、2週間でした。

「温水洗浄便座があるから何となく使っていた」という方は、お尻を洗うのをやめるのは、難しいことではないでしょう。しかし、今では、携帯型のお尻を洗浄する機器も出ているほど、「温水洗浄便座なしでは生きていけません」という方が多くいらっしゃいます。習慣となっている行動をやめるのは、簡単ではありません。

はじめは洗わないと気持ち悪いと感じたり、物足りなさを感じたりするかもしれません。ところが、「洗わないこと」を習慣にすれば、むしろ洗うことがストレスに感じるようになるのです。お尻のトラブルで悩んでいるのであれば、まずは、2週間だけでもお尻を洗うのはやめてみましょう。

佐々木 みのり 肛門科医/大阪肛門診療所副院長

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ささき みのり / Sasaki Minori

大腸肛門病専門医・指導医。大阪医科大学卒業後、大阪大学医学部皮膚科学教室入局。4年間、皮膚科医として勤務後、1998年より肛門科医に転身。同年7月に肛門科女性外来を開設。

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