「ジョン・レノン」繋がりから見えた新たな真実 幼い頃からの歴史を次世代に伝える男の証言

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――今はメンディップスにはお住まいではないのですよね?

管理人になって10年ほど経った時点で、もう無理だと思ったんです。自分の家ではないし、狭い1部屋で生活しなくてはなりません。

雪景色のメンディップス(写真提供:コリン・ホール)

しかも、何もかもが古い。テレビもなければWi-Fiもない。一時は妻と2人で住んでいましたから、かなり厳しかったです。

そこで、ナショナル・トラストを通じて、ヨーコに条件の改定をお願いしました。ヨーコは理解してくれました。

住み込みという条件を出したのは彼女でしたが、私たちが同じ通りの数軒隣に家を買ったということを知り、安心したこともあると思います。歩いて3分の距離ですから。

――メンディップスに住むというのは、ファンとしては究極の体験です。でも、博物館の中で暮らすようなものですよね。何もかもが1950年代のままで、一部屋しか自由に使えず、毎朝起きたらすべてを片付けて、人を入れなくてはいけないって、かなり大変だと思います。

そうなんですよ。管理人の生活感は絶対に見えてはいけないんです。見学者としては当然ですよね。「今はほかの人が住んでいるジョンの家」を見たいわけではなく、「ジョンが住んでいた当時を体験できる家」を見たいんですから。

いまだにそうですが、ものすごく気を遣います。読みかけの本やティーカップが置きっぱなしになっていないかどうかを何度も確認したり。

――住み込み中、料理はどうしていたんですか。コンロやオーブンなどの調理器具は当然、1950年代のものですよね?

あのコンロは使えるんですよ! 電子レンジもありましたが、私も妻も電子レンジを使った料理は好きではなくて。だから、旧式のコンロを汚さないように気をつけて使っていました。

あと、もちろん冷蔵庫もありますよ。だから、冷たいビールが飲みたくなっても、問題はありませんでした(笑)。ビールの話が出たところで、そろそろそんな時間かな。どうもありがとう。

(文中敬称略)

取材:越膳こずえ=ロンドン在住。ジャーナリスト、通訳・翻訳家。フロントラインプレス(Frontline Press)所属。

Frontline Press

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「誰も知らない世界を 誰もが知る世界に」を掲げる取材記者グループ(代表=高田昌幸・東京都市大学メディア情報学部教授)。2019年5月に合同会社を設立して正式に発足。調査報道や手触り感のあるルポを軸に、新しいかたちでニュースを世に送り出す。取材記者や研究者ら約40人が参加。スマートニュース社の子会社「スローニュース」による調査報道支援プログラムの第1号に選定(2019年)、東洋経済「オンラインアワード2020」の「ソーシャルインパクト賞」を受賞(2020年)。公式HP https://frontlinepress.jp

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