「ジョン・レノン」繋がりから見えた新たな真実

幼い頃からの歴史を次世代に伝える男の証言

――有名人もずいぶん見学に来たと耳にしています。有名、無名を問わず、記憶に残るゲストの話を聞かせてください。

亡くなった家族を偲ぶために来たという人が、ずいぶんいました。亡くなった息子さんがジョン・レノンの大ファンだったというお母さんとか。

ある着物姿の日本人女性は、自由に見学できる時間になって、2階のジョンの部屋へ向かいました。しばらくすると、号泣する声が聞こえた。上に行くと彼女は本当に泣き崩れていたんです。

一緒にいた同じく着物姿の彼女の友人から、彼女はつらい子ども時代を過ごし、ビートルズの音楽、特にジョン・レノンの存在が心の糧だったということを聞きました。着物を着て来たのも、ジョンに対する敬意を表するためだった、と。ジョンの部屋を見て、胸がいっぱいになったんでしょうね。そこで彼女を隣のミミの部屋に案内して、ベッドに腰掛けて、時間が来るまで一緒にジョンの話をしました。

――有名人が来る時は、特別なツアーを? さすがに一般客と同じバスで来ることはないですよね。

たいていそうですね。でも、みんなジョン・レノンが育った家に入ることにワクワクして、音楽やジョンの話をすることを楽しんでいる様子でした。ジャクソン・ブラウンやジェームズ・テイラーなど……。

来訪してくれた有名人の中でも一番有名なのはボブ・ディランでしょう。とてもいい人でしたよ。ボブは普通にバスで来ました。2010年だったと思います。ボブが参加したツアーはその日の最終回で、リバプール市内の中心部ではなく、郊外のスピーク・ホールが発着地という、人数の少ない回だったんです。だから、ボブとマネジャー、ツアーマネジャー、セキュリティの4人以外には、一般客の女性2人しか乗っていませんでした。全員で6人です。

バスがメンディップスに到着すると、それまで見学していた人が入れ替わりでそのバスに乗るので、私は彼らに挨拶をしていました。ボブたちが降りると、バスに乗ろうとした人たちが彼に気づいたんです。同乗していた女性たちは全然気づかなかったんですよ!

何を話せばよいか悩んだのはこのときだけ

ボブのスタッフは「あなたの話を聞きに来たのですから、気を遣わず、いつも通りにやってください」と声をかけてくれました。いわゆる有名人に会って「何を話せばいいのだろう」と悩んだのは、このときだけですね。

でも、すぐに思い直しました。ボブはこのツアーに参加したくて、普通にチケットを買って、バスに乗って来てくれたのだから、皆と同じように歓迎すればいいのだ、私の仕事をいつも通り精いっぱいするだけだ、と。

ツアーが終わると、ボブは普通のお客さんと同じように「ありがとう」と言ってくれました。私は「あなたの音楽は昔から大好きで、このようにメンディップスを案内することができて、名誉に思います。素晴らしい音楽をありがとうございます」と伝えました。

するとボブは「僕の曲が好きなのかい?」と言いました。私が「大好きです」と答えると、「今夜のコンサートには来てもらえるのかな?」と尋ねられました。

――コンサートには行く予定でした?

いや、それが、チケットが高くて……。でも、そんなこと、本人には言えないですよね(笑)。だから、「取れなかったんです」と言ったんですよ。すると、ボブはマネジャーに言ったんです。「コリンをゲストリストに加えてくれ」と!

その夜は送迎付きでコンサートに行きました。素晴らしい席でボブ・ディランを見ることができました。物質的な意味だけではなく、この仕事は私に多くのことを与えてくれます。

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