「ジョン・レノン」繋がりから見えた新たな真実

幼い頃からの歴史を次世代に伝える男の証言

――それはすごい! ピートは子どもの頃、よくメンディップスに遊びに来ていましたから、感慨深かったでしょうね。

そうです。彼は「10代の頃はほとんど毎日ここに来ていたんだ」とうれしそうな表情で、「少し歩き回ってもいいかな?」と尋ねてきました。

ジョン・レノンの親友だったピート・ショットン。メンディップスの前で(写真提供:コリン・ホール)

2人で家の中を歩きながら、ピートはずっと昔話を聞かせてくれました。テープを回していなかったことを、あれほど後悔したことはありません。彼が帰ったあと、大急ぎで覚えていることを書き記しました。それをピートに見せると、よろこんでくれましたね。

ピートは、例えば、「ジョンとミミは、ものすごい大喧嘩をしたものだった。でも、口論の後は必ず仲直りをしていた。喧嘩したまま、口をきかないということは一度もなかった」とか、そんな日常の細かいことを教えてくれたんですね。ほかにも「(ミミの夫・ジョンの伯父) ジョージは、いつも口笛を吹いていた」という話も。おもしろいでしょう?

自分でも思い出してみると、確かに子どもの頃、周りの大人の男性はみんな口笛を吹いていたんですよね。その頃は歩きながらヘッドホンで音楽を聞く習慣なんてなかったですしね。ジョンが歌の中で、口笛を吹いているのもその流れですよね。「ビューティフル・ボーイ」でしたっけ?

――「ジェラス・ガイ」が有名ですね。

そうでした。リバプールに限らず、当時のイギリスの男性の習慣だったんでしょう。そんな小さな話がたくさん集まるんです。

このような、日常に起こったエピソードの積み重ねによってメンディップスに生命が宿るんです。

子ども時代のジョンの姿を実感してもらいたい

管理人の仕事は、訪れる人と物語を共有し、メンディップスでの暮らしを後世代に伝えることなんです。ビートルズとしてのジョンについては、多くのことが知られていますが、子ども時代のジョンの姿を訪れる人に実感してもらいたいんです。

戦中、戦後のウールトン地区のことは私も知っていますが、私が話すのはあくまでもジョンが体験した物語なんです。ですから、当時の話をする時は必ず、ジョンの目線から伝えるように心がけています。

――それがメンディップスの魅力なんですね。

メンディップスは「生きた空間」と言えるでしょうね。仮に当時の内装を再現した建物だけだったとしたら、どうでしょう? 解説を聞くことで、それぞれの部屋の息吹が感じられるようになると思うんですね。

例えば、これはポール・マッカートニーとのインタビューでの話ですが、「コリン、あの玄関ポーチは今もあのままかい?」と尋ねられました。「あそこのリバーブがすごく良かったんだよね。僕たちは『エコーチェンバー』って呼んでいたっけ」と。

小さな話の積み重ねという話を先ほどしましたが、ポールからこんなエピソードを聞くことができるのは、本当に貴重なことですし、決定的な証言ですよね。

そのときポールに聞いてみたんです。「ミミから『うるさいからポーチで演奏しなさい』と追い立てられたのは本当ですか」と。するとこう答えてくれました。「そうじゃない。僕と会う前からジョンは、あそこの音がいいことを知っていたからね。進んでポーチに行って演奏していたんだよ。ジョンは昔からボーカルにリバーブをかけるのが好きだったんだ」と。

ジョンが自分のボーカルにリバーブをかけるよう、(プロデューサーの)ジョージ・マーティンに口うるさく注文をつけていたのは有名な話ですよね。それはメンディップスに端を発しているんです。ポールに聞いたこのエピソードからは、若い頃から音にこだわりがあった彼らの姿勢が伝わります。

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