ビートルズ誕生60年「歴史の証人」が語る実像 「ジョン・レノンが育った家」管理人の思い

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ジョン・レノンは5歳から22歳まで「メンディップス」で暮らしていた。ジョンは1980年12月にニューヨークで凶弾に倒れ、世を去る。その後、2002年に妻のヨーコ・オノがメンディップスを購入、ナショナル・トラストに寄贈し、翌2003年から一般公開されてきた。一方、老舗のライブハウス「キャバーン・クラブ」は、ビートルズが結成間もない頃から何度もステージをこなしてきたことで知られている。ビートルズの聖地のようなその店舗もコロナ禍で長期の営業停止を強いられ、経営危機にさらされているという。

――コリンさんもキャバーンに通っていたわけですね。

そうです。ただ、残念なことにビートルズが出ていた時代、自分はまだ若すぎて彼らの演奏を直接見ることはできなかった。でも、通うようになった頃、ボブ・ウーラー(キャバーン・クラブの看板D J・司会者)はまだ現役でしたよ。

Colin Hall/1949年生まれ。教職を経て、音楽ジャーナリストとしてのキャリアを持つ。メンディップスの管理人就任以来、エキスパートとして初期ビートルズの研究を続け、ボブ・ハリスと共同で『ジョンとポールが出会った日』を制作。ボブ・ハリスの制作会社WBBCとは『ビートルズが提供した曲たち』などの番組にも関わる。また、出版・番組制作の一環として、ポール・マッカートニー、ジョージ・マーティン、クオリーメンとのインタビューも行っており、英米のビートルズ関連の番組制作に協力している(写真:Harry Livingstone)

友だちと一緒にボブに声をかけ、「友だちがバンドをやってるけど、出演できますか」って尋ねたこともある。そしたら奥のオフィスに呼ばれて。こっちはティーンエイジャーだったから、緊張しましたね。

ビートルズのコンサートのポスターが壁に貼ってあり、それをボーッと眺めるばかりで。ボブは「出演は大丈夫だけど、最初の演奏はオーディションだから」と言いました。つまりノーギャラ(笑)。でも、友だちのバンドは、「オックス」っていう名ですが、キャバーンに出られるというだけで大喜びでした。

当日はほかにもいくつかバンドが出演していました。メインは、リー・ドーシーというアメリカ人のR&Bシンガー(ジョン・レノンがアマチュア時代からカバーし、アルバム『心の壁、愛の橋』にも収録した「ヤ・ヤ」が有名)。白いスーツがかっこよくて、パフォーマンスも素晴らしかったですね。オックスは前座でプログラムのかなり下のほうだったんですが、リー・ドーシーのサポートというだけで感動していました。

レンガの壁には出演アーティスト名が刻まれている

現在、オックスのメンバーは孫がいる世代です。キャバーンの向かいのレンガの壁には、出演したアーティストの名前がすべて刻まれていますよね? 「オックス」ってあるだろう、あれはおじいちゃんのバンドだよ、その後バンド名を変えたから、ほら、こっちのレンガもおじいちゃんのだ、と孫に自慢している(笑)。歴史に残る存在になったんですからね。

そう言えば、若い頃はキャバーンに行くことを、「Let’s go the Cavern」って言っていました。英語の文法としては、「Let’s go to the Cavern」が正しいんですが、どうしてでしょうね。

――キャバーンが人気だったのは、やはりビートルズが出演していたからですか。

その前から人気はありましたが、ビートルズが出演したことで、リバプールを超えて有名になりましたよね。もっとも、リバプールのバンドであれば、誰もが必ず1回はキャバーンに出演していました。ビリー・J・クレイマー、ジェリー&ザ・ペースメーカーズ、フォアモスト、レモ・フォー……皆、キャバーンのステージを踏みました。

キャバーンは、もともとジャズクラブでした。1957年1月のオープン当時は、ジャズが大流行していたからです。ロックンロールは、一過性の流行と考えられていたんですね。キャバーンも、パリにあった有名なジャズクラブの「ラ・カボ」を意識して作られた。だから、最初はロックンロールの演奏はなかったんです。

「スキッフル」は大丈夫でした。ジャズとブルースとフォークのフュージョンということで、中身のある音楽だと考えられていた。ロックンロールに対しては、ちゃんとした音楽という認識がなかったんです。

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