「米を冷まして食べる」のが病気を遠ざける根拠 「冷や飯」で増えるレジスタントスターチの特徴

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炭水化物の糖質(でんぷん)の中には、レジスタントスターチ(難消化性でんぷん)という成分があります。レジスタントスターチは糖質ではありますが、「消化しにくい」(レジスタント)「でんぷん」(スターチ)という名前のとおり、食物繊維と同じような、いや、それ以上の働きをします。

食物繊維には、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維の2種類があり、腸内環境を良好にするには両方を摂取することが大切です。腸の善玉菌の栄養になったりする水溶性食物繊維、そして、腸にたまった有害物質を回収したりする不溶性食物繊維、両者とも腸内環境を整えるうえで欠かせない働きをします。

レジスタントスターチは、それら水溶性と不溶性、両方の食物繊維の機能を兼ね備えているのです。だから、腸内環境を非常に効率的に整えていくことができます。さらに、普通の食物繊維は直腸を素通りしてしまうのですが、レジスタントスターチは直腸にもしっかりアプローチして、体によい善玉菌を届けることができます。

このようにレジスタントスターチは、食物繊維よりも効率的に、腸全体をくまなく掃除しながら腸内細菌に栄養を与えることができるのです。これが「ハイパー食物繊維」と呼ばれるゆえんです。

研究でわかったレジスタントスターチの不思議な特徴

レジスタントスターチの存在が発見されたのは、1980年代のことでした。毎日食べていたにもかかわらず、このときまで、その存在に誰も気づかずにいました。そして現在、研究技術の進歩により、レジスタントスターチには腸内環境を良好にする大切な役割があることがわかってきました。

レジスタントスターチには、不思議な特徴があります。それは、「冷ますと増える」ということ。加熱後のでんぷんを冷ますと、伸びてしまったブドウ糖のひもが再び絡み合って、たくさんの結び目ができます。こうなると消化酵素でもブドウ糖のひもが解けなくなり、消化されにくくなるのです。

例えば、炊きたてのご飯に比べて、冷ましたご飯には約1.6倍の量のレジスタントスターチが含まれています。つまり、ご飯を冷ますとレジスタントスターチの量が増えるということです。

レジスタントスターチの測定法が確立されたのは最近であるため、昔の人がどれだけ摂取していたのかはわかりません。ただ現在より保温技術が整っていなかった頃は、「冷たいご飯」を今よりたくさん食べていたことは間違いないでしょう。ということは、昔の日本人は意識しなくてもたくさんのレジスタントスターチを摂取していたと考えられます。

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