子供を「生きづらい大人」に育てない親の心構え 大事なのはわが子に「すぐ正解を教えない」こと

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たとえばニュースを見ながら、「お母さん、これがわからないんだけど、あなたはどう思う?」と質問したり相談したりします。

ゲームの話で関係性ができると、親はついゲームの話でつないでいこうと思いがちです。でも、親が子どもを対等に信じて、「これ、どう思う?(あなたの意見を聞かせて)」と聞いてみる。

ただし、すぐに素直に答えてくれて、親子関係が改善するみたいな変な期待はしないこと。

何を聞いても「別に」「うるさい」「面倒くさい」「わからない」しか言わなかったら、しつこく追いかけないのもコツです。

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子どもが逃げていくときに追いかけるのはNG。「残念! バイバーイ」とあっさり引き下がりましょう。しつこくすると、せっかく築いた関係が元に戻ってしまいます。

大空小学校でも、ありました。せっかく先生が自分を変えて、子どものほうから来てくれるような関係性ができてきたのに、あるとき、子どもに「うるさい、そんなん知るか!」と言われた途端、「ちょっと待て!」とか言って先生が怒ってしまった。

これでほんの少しできた絆が切れて、マイナスのスパイラルにはまってしまうんです。そんなときは、笑いで終わらせる、しつこく追いかけない。

私は学校でも、「それは残念!」などと言って軽くおどけながら子どもから離れるようにしていました。そうすると不思議なもので、「なんで人がしゃべってる最中に出て行くねん」とぶつぶつ言いながら子どもが帰ってきたりします。

軽い笑いに変えると、「あなたは悪くないよ。そういうこともあるよね」という空気になります。こういうときにその場がスカッと軽くなるような言葉をいくつか持っておくといいですね。関西人はちょっと有利かな(笑)。

子育てに大事なたったひとつのこと

この文章を読んでいるお母ちゃんたちも今、意図的に変わろうとしているときですよね。でも今まで何年もかけて子育てしてきた関係性を、急に変えることはできません。親の勝手で、親の都合で親が変わるわけですから、子どもが急にその穴を埋められるわけがないと肝に銘じて、子どもに学ばせてもらう気持ちを忘れないでください。

どれだけ子どもを一人の人間として尊重しているか。これが大事なんです。

木村 泰子 大空小学校初代校長

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きむら やすこ / Yasuko Kimura

大阪府生まれ。武庫川学院女子短期大学(現武庫川女子大学短期大学部)卒業。大阪市立大空小学校初代校長として、障害の有無に関わらず、すべての子どもがともに学び合い育ち合う教育に力を注ぐ。その取り組みを描いたドキュメンタリー映画『みんなの学校』は大きな話題を呼び、文部科学省特別選定作品にも選ばれた。2015年に45年間の教員生活を終え、現在は講演活動で全国を飛び回っている。東京大学大学院教育学研究科附属バリアフリー教育開発研究センター協力研究員

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