知識創造理論が「ビジネス最強の武器」になる訳 四半世紀で「日本企業が失ったもの」は何か
SECIモデルの起点は「共同化プロセス」にある
遠藤:1995年に英語版の『知識創造企業』が世に出て、翌年出版された日本語版を当時の私もむさぼり読みました。
つい最近、24年ぶりに新装版が発売されました。おめでとうございます。2020年は続編の『ワイズカンパニー』の翻訳版も出ていますから、「知識創造理論」の当たり年ですね(笑)。
野中:ありがとうございます。『知識創造企業』と『ワイズカンパニー』を一緒に読むと、前著で取り上げられた日本企業と後著のそれの顔ぶれががらりと変わっています。
前著では知識創造のメカニズム、つまり「SECI(セキ)モデル」がうまく合致する新製品開発プロセスにフォーカスしているのに対し、後著は経営全般に光を当てています。
そのため、顔ぶれが違って当然といえば当然なのですが、例えば、前著で取り上げたシャープは、後著では候補にもなりませんでした。「イノベーションを生む経営の持続力」という面で、この四半世紀、「日本企業が失ったもの」は何なのか、一度考えてみたいと思っています。
遠藤:それはとても興味深いテーマですね。ぜひ考察をお願いします。「SECIモデル」の大前提は、最初の「Sの共同化(Socialization)」、つまりは「暗黙知」を互いに共有するプロセスにあると考えてよいのでしょうか?