知識創造理論が「ビジネス最強の武器」になる訳 四半世紀で「日本企業が失ったもの」は何か

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野中:そのとおりです。もっと簡単に言うと、「お互いが裃を脱ぎ、向き合って共感すること」です。

「共感」は相手の行動を目にした途端「無意識に起こる」

野中:そうすると「相手の視点」に無意識に達することができ、「唯一無二のペア」になる。その結果、「相手が何か困っているなら、何とかしてやりたい」と悩むことになります。ひとしきり悩んだ後、「では一緒に解決しよう」となると、そこに「対話」が生まれます

「思い」が「言葉」に、「暗黙知」が「形式知」に変わる。それが「Eの表出化(Externalization)」です。

次の段階として、「暗黙知」が「形式知」となり、その「形式知」と「新たな形式知」が組み合わさって、「コンセプト」や「モデル」となります。それが「Cの連結化(Combination)」で、それらを実践することで、各自が「新たな暗黙知」を獲得し身体化するのが「Iの内面化(Internalization)」です。

出所:野中郁次郎・竹内弘高『知識創造企業(新装版)』

こうやって組織内を「SECIモデル」がぐるぐると廻っていくわけです。

遠藤:改めてそう聞くと「SECIモデル」はとても手間のかかるプロセスですね(笑)。だからこそ最初に、お互いがペアになるための「共感」が必要になるのでしょうか。

野中:それはそうかもしれません(笑)。興味深いのは、「共感」というのは、「相手の行動を目にした途端、無意識に起こる」ということです。

人間の脳には、他者の行動を外から眺めているだけで、あたかも鏡のように、その行動を自分が行っているような働きをする細胞があります。これを脳科学では「ミラーニューロン」と呼んでいます。それがあるから、2人の人間が出会ったら、すぐにシンクロナイズできるのです。

遠藤:「SECIモデル」は哲学だけではなく、脳科学も取り込んでいるということですね。

野中:そうです。その共感関係の原型は「親子関係」なのです。

赤ん坊にとっては、いま触れている肌が自分のものか母親のものか、いま聞こえた声が、自分が発したのか母親なのかが、よくわからない主客未分関係にある。そこには母親との一心同体の共感しかありません。その状態を現象学では相互主観性(が成立した状態)と呼んでいます。

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