バイデン1/20就任演説で外せない7大ポイント 危機的なアメリカをどう一致団結させるのか

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その前に、まずは、2017年1月20日のトランプ大統領就任演説に見られた特徴を4つ押さえておきたいと思います。

1つ目は、「ワシントンvs.国民」「エスタブリッシュメントvs.国民」という対立軸、及び超絶に暗い「殺戮」の過去から明るい未来へという世界観が提示されたこと。

2つ目は、アメリカ第一主義、自国利益の優先が宣言されたこと。

3つ目は、大統領選挙勝利演説で語られた「すべてのアメリカ人の大統領になる」という明快な表現や「民主主義」「人権」という伝統的価値に関する言葉は使われなかったこと。

そして4つ目は、「分断から団結へ」のテーマへある程度時間は費やされたものの、全体のトーンはすべての国民向けというよりも選挙戦中の支持者向けのような扇動的なものであったことです。

そして7つのポイントを順にお伝えしましょう。

国民全員に向けて「分断から団結へ」を訴える

① 演説の対象(国内)

トランプ大統領の就任演説の対象は、既述のとおり、多少「分断から団結へ」というテーマに時間は割かれたものの、全体としては自らの支持層が中心でした。

それに対して、バイデン新大統領就任演説は国民全員に向けられたものになると予想されます。バイデン氏は、昨年8月20日の民主党全国大会で行った大統領候補指名受諾演説で「私は、民主党の候補であるが、アメリカの大統領になる。私は、私を支持しなかった人々のためにも、私に投票してくれた人々のためにと同じように、懸命に任務を果たしていく」「今は“政党のとき”ではない。今は“アメリカのとき”でなければならない」「アメリカは単に“赤い州”と“青い州”という対立する利害の集合体ではない」などと述べ、「分断から団結へ」を強調しています。また冒頭でも挙げたように、大統領選挙勝利演説では、「私は分断ではなく統合を目指す大統領になることを約束する」と宣言しています。

国民全員に向けて「分断から団結へ」を訴えるバイデン氏の姿勢は、トランプ大統領との最も際立った違いになると言ってよいでしょう。連邦議会議事堂乱入事件やその後の出来事などから見て取れるように、分断の様相が依然混迷をきわめる状況下で、このポイントはバイデン新大統領就任演説で最も注目される点です。

② 演説の対象(国外)

大統領就任演説の対象は、一元的にはもちろんアメリカ国内です。もっとも国際社会に対するアメリカの軍事、外交、政治、経済などでの影響力に鑑みれば、その対象は実質的に国外にも及ぶと捉えるのが自然です。

その点、トランプ大統領は、選挙戦から就任演説に至るまで、「アメリカ・ファースト」「アメリカを再び偉大な国に」といった内向きのスローガンを繰り返し唱えました。つまり、トランプ大統領就任演説の対象は、国際社会に向けたものではなく、アメリカ第一主義、自国利益優先の原則のもとで自国民中心となりました。結果的に、トランプ政権下ではテクノロジー覇権をめぐる戦いや米中新冷戦が顕在化しています。

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