感染症との闘いを生きる上で押さえたい大原則

人間の好奇心を揺さぶる「はじめて」を学ぶ

だが、本当の意味での予防接種がはじまったのは1797年。イギリスの医学者エドワード・ジェンナーが、症状が軽くてすむ牛痘に故意に感染することによって、死に至る危険を持つ天然痘にかからなくなることを発表したのだ。

19世紀になると、ルイ・パスツールが予防接種という語(vaccination)を生み出し(1891年)、炭痘病(1881年に実例で証明)と狂犬病(1885年)のワクチンを開発。その後は多数のワクチンが次々と生まれ、コレラ(1892年)、チフス(1896年)、結核(BCG、1921年)、髄膜炎(1978年)、MMRV四種混合ワクチン(麻疹、おたふく風邪、風疹、水痘、2005年)などが開発されているという。

現在では、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症は1910年ごろにサルから人間に感染したと考えられており、1959年には(現在の)コンゴ民主共和国において、人間のHIV感染の症例がはじめて報告されている。

1982年にはAIDS(後天性免疫不全症候群)という用語がはじめて使用されたが、それはこの病気が伝染病であると宣言されたときだった(まもなくパンデミック宣言が行われた)。さらにその翌年にはフランスの科学者たちが原因ウイルスを発見。1986年には国際社会がHIVという用語に同意することとなった。

そして1997年にはアメリカで、抗レトロウイルス薬による効果的な(ただし高価な)治療が開始されることに。エボラ出血熱(EVD)は1978年にアフリカで発見され、2014年にアフリカ大陸外での感染(スペイン)がはじめて発見された。

こうした記述からは、人類がさまざまな感染症と闘ってきたことがわかる。さて、いま私たちを悩ませている新型コロナウイルスのワクチンは、果たしていつ誕生するのだろうか?

「学び」と「楽しみ」を両立

たとえばこのように、本書ではあらゆる事柄についての「はじめて」を知ることができる。また大きなポイントは、必ずしも冒頭から順に、隅から隅まで細かく読み通す必要はないということだ。興味のあるところだけ拾い読みするだけでも、十分に楽しめるのである。

そう、これは「学ぶ」ためでもあると同時に「楽しむ」ための本でもあるのだ。読んでみて、私はそう感じた。

ロス氏もまた、そうした読まれ方を想定しているようだ。「はじめてのはじまり」「生活」「健康と医療」「移動」「科学と工学」「平和と戦争」「文化とスポーツ」という7つの部を、それぞれいくつかのトピックに分け、さらにトピックをいくつかのテーマに分けているのも、そうした読み方に配慮しているからだ。

考えようによっては、現時点でまったく関心が持てなかった項目が、1年後には興味の対象となることも十分に考えられる。だからこそ読み終えたあとも書棚の、なるべく引き出しやすいところに並べておきたいと感じている。

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