感染症との闘いを生きる上で押さえたい大原則

人間の好奇心を揺さぶる「はじめて」を学ぶ

しかし、結果的にこれらの成果には、フランス人のルイ・パスツール(1822-95年)による低温殺菌法の確立、また「近代的な外科手術の父」と呼ばれるスコットランド人ジョセフ・リスターの業績が続くことになった。リスターは、1870年代に手術室の無菌状態を強く主張したはじめての外科医だそうだ。

アレクサンダー・フレミング(のちに卿の称号を得た)が偶然の成り行きで1928年にペニシリンを発見した物語(英国)は有名で、あらためて説明するまでもないだろう。だがそれより2000年も前に、中国、エジプト、セルビアなどの古代文明がすでにカビの生えた(つまり、抗生物質の原始的な形態を含んだ)パンがもつ治癒力を偶然に発見していたことは、ほとんど知られていない。(102ページより)

だがフレミングの「はじめて」には、疑問の余地もあるという。1870年にはイギリスのジョン・スコット・バードン=サンダーソン卿が、細菌の成長をカビがどう抑制するかに注目しており、1890年代にはドイツの科学者ルドルフ・エメリッヒとオスカー・ロウが、はじめての抗生物質であるピオチアナーゼを生み出したのだ。

さらにオックスフォード大学の科学者ハワード・フローリーとエルンスト・チェーン(イギリス)が、カビから有効な薬品であるペニシリンを抽出したのは、1939年になってから。

ペニシリンは1941年にイギリスではじめて患者に用いられ、はじめての広域抗生物質であるオーレオマイシンは1945年にアメリカで発見された。「スーパー耐性菌」の抗生物質耐性に関してはじめて警鐘が鳴らされたのは1954年だったというが、既知のスーパー耐性菌を殺せるとされる抗生物質が開発されたのは、2018年になってからだという。

予防接種

天然痘に一度かかると、二度とかかる者はいないことに気づいたギリシャの歴史家トゥキディデス(紀元前460年頃-400年頃)は、おそらく、現在では予防接種と呼ばれている現象――感染症に一度かかると免疫系が刺激され、より毒性の強い感染に抵抗する力が生まれることーーをはじめて報告した人物だ。(130ページより)

人痘摂取(故意に天然痘に感染させる方法での天然痘に対する予防接種)が10世紀に中国ではじめて試されたという不確かな話もあるものの、より信頼性の高い証拠によれば、予防接種は同じ中国で1549年にはじめて実施された。その慣行が中国からインド、トルコへと伝わり、さらにヨーロッパを経て、18世紀末には南北アメリカへ伝わっているのだそうだ。

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