ゴーンの右腕が法廷で吐露した「痛恨の汚点」 日産の元COOが明かしたカリスマ経営者の圧力

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COO(最高執行責任者)に志賀俊之氏が就任することが発表された2005年2月の会見(撮影:尾形文繁)

1月12日、東京地方裁判所の104法廷、かつてカルロス・ゴーンの右腕として日産自動車の経営に携わった証人は、まるで自らが被告人であるかのように、反省の弁を口にした。

「私の人生の中で本当に痛恨の汚点で後味の悪さがあった。報酬の話は立ち消えのように消えていったが、後味の悪さだけがずーっと残っていた。反省しています」

「驚くほど強い調子で言われて、『そうすべきではありません』と言うべきなのに結果的に指示に従ってしまった。深く反省している」

証人とは志賀俊之氏のことである。2005年から2013年まで日産の代表取締役COO(最高執行責任者)を務め、カルロス・ゴーン元CEO(最高経営責任者)の右腕とも称された。その後も代表取締役副会長や代表権のない副会長、非常勤取締役として日産に残り、2019年6月に日産から完全に離れた。日本での裁判を前に、保釈されていたゴーン氏が2019年末にレバノンに逃亡したことはまだ記憶に新しい。

ゴーン氏の報酬は20億円くらい?

裁判は日産のグレッグ・ケリー元代表取締役や法人としての日産を被告とする金融商品取引法違反(有価証券報告書虚偽記載)容疑の刑事事件である。ケリー氏は容疑を否認し、日産は容疑を認めている。初公判は2020年9月15日。検察との司法取引に応じた日産の大沼敏明・元秘書室長の証人尋問が22回、その後に秘書室スタッフらへの証人尋問が5回と、2020年は大沼氏関連の尋問に終始した。1月12日の志賀氏への証人尋問は、初公判から数えて29回目、2021年に入って初の公判だった。

志賀氏の証言によれば、ゴーン氏が日産自動車の社長に就任した1999年から2008年まで、ゴーン氏の報酬は、代表取締役や取締役共同会長を歴任した小枝至氏と協議して決めていたという。当時のゴーン氏の年棒の正確な金額を志賀氏は知らないが、「全取締役の総額からゴーン氏以外の報酬を差し引くと20億円くらいだから、そのくらいだったのではないか」(志賀氏)と述べた。

小枝氏が相談役名誉会長に退いた2008年6月、ゴーン氏の役員報酬を今後は自分(志賀氏)と協議して決めるものだと志賀氏は思っていた。なぜなら、取締役会決議で、ゴーン氏の報酬はCEOとCOOが協議して決めることになっていたからだ。

次ページところが、ゴーン氏が言ったのは・・・
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