ゴーンの右腕が法廷で吐露した「痛恨の汚点」 日産の元COOが明かしたカリスマ経営者の圧力

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ところが「カルロス・ゴーンに呼ばれて、『志賀には見せたくない。これからは取締役の増減率の平均に合わせて自らの報酬を増減させるから、見せるまでもない。それでもよいか』と言われた」(志賀氏)。

上述の取締役会決議に照らせば不十分だと志賀氏は思ったが、「ほかの経営会議メンバーと(ゴーン氏の報酬の増減率を)合わせるのは合理性があると考え、私はその話を受けました」(志賀氏)。

事件が起きたのはそれからまもなくの2010年のことだ。民主党政権下、連立政権を組んでいた国民新党の亀井静香・金融担当大臣が「年間1億円以上の役員報酬は開示すべきだ」と主張。これが2010年3月期から制度として施行されることとなり、ゴーン氏の報酬も開示せざるをえなくなった。

初めて知ったゴーン氏の報酬額

そこで「カルロス・ゴーンから、『いくらくらいであれば日本社会や社内に受け入れられるのか』と聞かれた。小枝氏と相談し『10億円くらい』と答えた」(志賀氏)。2010年6月の株主総会で、志賀氏は8億9100万円というゴーン氏の報酬実績を初めて聞いたという。大沼敏明・秘書室長(当時)に尋ねると、「カルロス・ゴーンは2010年3月までに差額について返金してくれていました」と言う。志賀氏は「10億円以内という話を受け入れてそうしたのだと思い、さすがだ、とカルロス・ゴーンに感謝した」という。

2010年3月期の有価証券報告書に記載されたゴーン氏の報酬額8億9100万円(上)。事件後の訂正報告書で14億3900万円に修正された(下)(編集部撮影)

翌2011年2月。志賀氏は小枝氏に呼ばれた。「減額した報酬のままではゴーン氏が気の毒なので退任後の報酬を一緒に考えよう」と持ちかけられたという。志賀氏は「開示制度の趣旨に反し、リーガルリスクがあると直感し、不正に近い行為だ」と思ったという。そこで趣旨をゴーン氏に確認した。

当時、志賀氏とゴーン氏は毎月1回、「ワン・オン・ワン・ミーティング」という1対1の協議を行っていた。同年3月の協議で、今まで得ていた報酬と実際の報酬との差額について尋ねると、「普段は冷静に話を聞くゴーンだったが、その時は立ち上がり、語気を強めて、『ハナワとの約束の金額はもっと多い。私の現在の報酬はその約束を下回っている。開示せずに受け取れる方法を考えろ』と強い調子で言われた」(志賀氏)。

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