「ロンバケ」のようなドラマは二度と作れない訳 名作ドラマで振り返る「情報通信ツール」の進化

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情報通信ツールの進化は、ドラマの設定や演出をドラスティックに変えてきました。そんな中起きた、2020年のコロナ禍。

従来通りの撮影・収録が中断を余儀なくされる中、テレビは一斉にリモートでの収録に切り替えます。演者がそれぞれの自宅や事務所から、パソコンやスマホを利用して出演するスタイルは、今もさまざまな番組で採用されています。

これも、情報通信ツールの進化・普及があればこそ。10年前では、こうした方式は採れなかったかもしれません。

コロナ禍に生まれた「リモート収録ドラマ」

そして新作の撮影が困難になったドラマでも、この「リモート収録ドラマ」が登場。先鞭をつけたのは、NHKでした。

まだ全国的に緊急事態宣言が発令されていた5月上旬に『今だから、新作ドラマ作ってみました』というタイトルで、3回にわたって30分枠のリモート収録によるドラマを放送。

宣言解除後の5月29日には、放送を中断していた『家政夫のミタゾノ』(テレビ朝日系)が、役者同士の絡みがない形で「特別編~新作つくらせて頂きました」を制作、放送。

以降、『リモートドラマ Living』(NHK総合)、『世界は3で出来ている』(フジテレビ系)、『リモートで殺される』(日本テレビ系)、『JOKE~2022バニック配信!』(NHK総合)など、リモート収録、またはそれを模した演出でのドラマが相次いで放送されています。

最近では、『共演NG』(テレビ東京系)や『恋する母たち』(TBS系)など、スマホやパソコンでのリモート会話を自然に取り入れる演出も散見されるようになりました。

身近な情報通信ツールの進化・変化を取り入れ、変容していくドラマは、まさに世相を映す鏡です。

今では、ドラマの登場人物が携帯電話やメールを使用するのは、呼吸しているのと同じぐらい当たり前なことになっていますが、実はまだ、ここ20年余りのこと。コロナ禍で登場したリモートも、10年後にはもっと進化した形で、ドラマの中で展開されているのかもしれません。

小林 偉 メディア研究家

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こばやし つよし / Tsuyoshi Kobayashi

メディア研究家、放送作家、日本大学芸術学部講師。東京・両国生まれ。日本大学藝術学部放送学科卒業後、広告代理店、出版社を経て、放送作家に転身(日本脚本家連盟所属)。クイズ番組を振り出しに、スポーツ、紀行、トーク、音楽、ドキュメンタリーなど、様々なジャンルのテレビ/ラジオ/配信番組などの構成に携わる。また、ドラマ研究家としても活動し、2014年にはその熱が高じて初のドラマ原案・脚本構成も手掛ける。

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