アメリカが本気になると、体制整備は一気に進む。このことを象徴するのが複数の検査をまとめられる「プール検査」の確立だ。昨年11月、デューク大学の医師たちが、プール検査の研究成果を発表した。この研究では、5つのサンプルをまとめて検査し、もし、陽性が出た場合に、個別に検査するという方法を用いても、感度は損なわれず、80%試薬を節約でき、さらに再検査の場合でも18~30時間程度の遅れで済んだ。
この研究成果は、アメリカの疾病対策センター(CDC)が発行する週報「MMWR」が掲載し、『ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディスン』を発行するマサチューセッツ医師会も、この論文を『ジャーナル・ウォッチ』というニュース・レターの中で紹介した。そして、「プール検査の有効性は明白」と評している。一気にコンセンサスを確立したことになる。
プール検査の有効性については、昨年10月にルワンダの研究者が『ネイチャー』に報告しており、遅きに失した感があるが、アメリカが巻き返しに必死なのがわかる。
日本は本気でPCR検査を増やすつもりがない?
日本は対照的だ。11月20日の衆議院経済産業委員会で、佐原康之・厚労省危機管理医療技術総括審議官は「現在、国立感染症研究所において、その検査性能および再検査を含む総コスト、時間等について研究を実施している」「非常に手間がかかるなど、実用化に向けても課題がある」と答弁し、いまだに臨床応用されていない。本気でPCR検査を増やすつもりがないことがわかる。
厚労省は流行当初から、PCR検査を懸命に抑制してきた。シンクタンク「アジア・パシフィック・イニシアティブ」(船橋洋一理事長)の調査により、政府中枢に対して「PCR検査は誤判定がある。検査しすぎると陰性なのに入院する人が増え、医療が崩壊する」と説明に回っていたことがわかっているし、7月16日には、コロナ感染症対策分科会は「無症状の人を公費で検査しない」と取りまとめている。
これは翌日に、塩崎恭久・元厚労大臣などが主導して、「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」を閣議決定することへの対応だ。この中にPCRの拡大、感染症法の改正などが入っていた。
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