厚労省「PCR拡充にいまだ消極姿勢」にモノ申す あの中国が国内感染を抑え込んだ本質は何か

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結局、日本におけるPCR検査の増加は、民間の動きを待つしかなかった。その嚆矢は12月4日に新橋駅前で操業を開始した「新型コロナPCR検査センター」だ。ウェブで予約すれば、検査センターを訪問して唾液を採取するだけで、翌日にはメールで結果が届く。1回の費用は3190円だ。同様の検査センターは続々と立ち上がっている。どこも希望者が殺到している。

ところが、このような動きを厚労省は快く思っていない。12月16日、朝日新聞は『民間PCR施設、都心に続々 ばらつく精度、陽性なのに「陰性」も 厚労省が注意喚起』という見出しの記事を掲載している。

私は、この記事を読んで、どのような根拠に基づき精度に問題があると主張しているのかわからなかった。根拠を示さなければ、単なる営業妨害だ。厚労省も、その意向をそのまま報じるメディアもいただけない。国家をあげて検査体制を強化しようとする世界とは対照的だ。

厚労省が方針転換しなければ迷走は続く

最近、政府は不特定多数の無症状者を対象とした無料のPCR検査を、都市部の繁華街や空港など多くの人が集まるところではじめる方針を打ち出した。

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ただ、これは期待できないだろう。私はアリバイ作りと考えている。なぜなら、このような検査施設を立ち上げるのは3月とされているからだ。政府が本気でPCR検査を増やしたければ、民間検査センターを支援すればいい。検査サービスは多様化し、アメリカのように大学などさまざまな場所で検査を提供するようになるだろう。薬局で検査キットを販売し、通信販売を認めれば、さらに検査数が増える。

このような体制をとることは、厚労省が自らの過ちを認めることになる。これまでの彼らのやり方をみていると、そんなことは期待できない。現在、日本が適切な対応をとれない最大の障壁は厚労省医系技官と周辺の専門家の存在にあると私は思っている。彼らが責任を認め、人事を一新しなければ、このまま迷走が続くのは避けられない。菅首相のリーダーシップが問われている。

上 昌広 医療ガバナンス研究所理事長

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かみ まさひろ / Masahiro Kami

1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。

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