この説明は適切でない。田村大臣が紹介したのは、6月16日に『ランセット感染症版』が掲載した「CMMID COVID-19ワーキンググループ」のモデル研究だ(「Early dynamics of transmission and control of COVID-19: a mathematical modelling study」2020年5月1日)。確かに、この中で、彼らは、一般集団を広く検査しても感染は5%しか減らせないが、発症者を見つけ、家族とともに隔離し、さらに接触者をトレースすれば、感染を64%も減らすことができると推定している。
ただ、その後の研究で、多くの無症状感染者がいることが判明し、彼らは態度を変えた。「CMMID COVID-19ワーキンググループ」は、11月10日に「コロナ感染を検出するためのさまざまな頻度での無症状感染者へのPCR検査の有効性の推定」という論文を発表し、無症状の人へのPCR検査が有効で、積極的に検査を活用すべきと結論している。この論文はイギリスでは大いに話題になったようだが、田村厚労大臣は触れなかった。
実は欧米は検査数が足りていない
では、PCR検査を「闇雲」にやっても流行が抑制できない欧米の現状はどう考えればいいのだろう。実は、欧米は検査数が足りていないのだ。表をご覧いただきたい。主要先進国と東アジアにおけるPCR検査と感染状況を示している。
注目すべきはPCR検査数を感染者で除した数字だ。1人の感染者を見つけるために、どの程度のPCR検査を実施したかを示している。中国が1808.7回と突出し、韓国66.6回、カナダ24.3回、イギリス22.2回、ドイツ21.0回、日本19.5回と続く。最下位はアメリカの12.7回だ。中国の142分の1である。
実は、コロナ対策を考えるうえで、中国のように「闇雲」にPCR検査をやることは合理的だった。コロナの特徴は感染しても無症状の人が多いことだ。無症状の人が巷にあふれれば、偶然、症状が出た発症者と濃厚接触者をしらみつぶしに探すだけでは、大部分の無症状感染者を見過ごすことになる。
無症状感染者は、どこにいるかわからないから、彼らを「隔離」(自宅を含む)しようとすれば、網羅的に検査するしかない。仮に住民の0.1%が無症状感染だとすると、1人の感染者を見つけるためには、1000人の検査が必要になる。まさに、中国が採った戦略だ。
1月5日、北京近郊の石家荘で54人の感染者が確認されると、1100万人の検査を実施することを決めたのも、このような戦略に従っただけだ。
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