テレ朝は「相棒」病?犯罪ドラマ乱立の真相 米国テレビドラマが証明する、知られざる”大金脈”

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米国でなぜこんなに犯罪ドラマが人気なのかといえば、人種も宗教も文化も違う人たちの共通の関心ごとは何かと追求していくと、「生と死」に行きつくからです。それに、「犯人が誰か知りたい」と思う気持ちは、万国共通。固定のミステリーファンに加え、何となく見てしまう視聴者層を取り込める普遍性がありますから、全国ネットの放送局の視聴者数トップ10のほとんどが犯罪ドラマになるのも当然の成り行きかもしれません。

米国で大人気の『NCIS』も犯罪ドラマ(画像は発売中のDVD

同じように「ER緊急救命室」(NBC)「グレイズ・アナトミー」(ABC)「ドクターハウス」(FOX)など「医療ドラマ」の人気が高かったのも、その中心に「生と死」があるからと言えます。

米国で「セックス・アンド・ザ・シティー」(HBO)のようなドラマがケーブルチャンネルから大ヒットすることもありますが、ごくまれ。恋愛ドラマは、主人公の年齢によって視聴者層が限定されるので、リスクをとって、あえてネットワークで放送しようとは思いません。

中高年は主人公が自分の子どもような年齢のドラマを見ないし、若者も中高年の恋愛は見ません。ヒスパニック系、アジア系、アフリカ系……。主人公の人種によっても、視聴者の共感度は変わってきます。そのため、こうした恋愛ドラマは、視聴者層がチャンネルごとに特化されたケーブルチャンネルで放送されるのがほとんどです。

犯罪ドラマはコスパも最高

視聴者層が安定していることに加えて、犯罪ドラマのコストパフォーマンスがとても高いことも、放送局にとっては大きな魅力となっています。犯罪ドラマの基本は1話完結。ちょっと空いた枠にどんどん入れられるので、本放送が終わってからも再放送しやすいのです。権利処理さえきっちりしておけば、1話単位で何十回、何百回と再放送できます。

「相棒」の再放送を見ていただければわかるとおり、1話完結なので、寺脇康文さんと成宮寛貴さんが続けて登場しても、何の違和感もありませんし、第3話が放送された次の日に第10話が放送されても全く気になりません。だから視聴者は「何となく」見てしまうのです。

さらに、1話完結ドラマは、世界中のどのテレビ局にとっても編成しやすいので、海外や他の系列局などによく売れます。前出の全米第1位のドラマ「NCIS」(CBS)は、今月11日に開催されたモンテカルロ国際テレビ祭で、世界で最も視聴されているドラマに贈られる国際テレビ観客賞を受賞しました。その視聴者数は全世界で5760万人にも上るとのことです。

そしてひとつあたれば、次はスピンオフが制作できます。米国の場合は、州によって法律もカルチャーも違うことから、舞台となる都市を変えるのが定石となっています。「NCIS」は、「NCIS:LA」「NCIS:ニューオーリンズ」、「CSI」は、「CSI :ニューヨーク」「CSI:マイアミ」。1話完結のドラマが同じフォーマットで、俳優と都市を変えて、どんどん増殖していきます。日本のドラマに例えると「相棒:大阪」とか、「相棒:沖縄」のようなイメージですね。

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