米国市場になだれ込む、鉄鋼各社の台所事情 拠点を持たないJFEはどう動く?
日系各社が今、米国に関心を寄せている背景には、いくつかの事情がある。
一つは、これまで成長が続いてきたアジア市場の停滞だ。2013年の中国の粗鋼生産量は7.8億トンと、世界の生産量のほぼ半分を占める。中国は自国で消費しきれない大量の鋼材を東南アジアに輸出しており、鋼材価格低迷の要因となった。「中国の過剰生産によってアジアが儲からなくなり、日系メーカーはアジアでの事業に二の足を踏むようになった」(鉄鋼商社首脳)。
そこに降って湧いたのが、北米市場の回復だ。特に自動車の生産台数は、リーマンショック後の2009年には573万台まで落ち込んだが、2013年には1104万台まで持ち直した。今後も景気回復を背景に堅調な需要が見込まれる。
さらに、燃費規制が強化されており、自動車の軽量化ニーズが高まっている。日系大手は、軽量だが強度に優れる高張力鋼板で高い技術力を持つ。新日鉄住金は既存工場の増強だけでは不十分として、他社工場の買収を選んだ。神戸製鋼も、自動車用アルミパネルの年間市場規模が現在の10万トンから2020年には100万トンまで拡大すると試算。合弁工場の新設に踏み切った。
JFEも流れに乗れるか
こうした流れに出遅れたのがJFEだ。同社はアジア各国に複数の提携先を抱える一方、北米には自動車用鋼板の加工拠点を構えていない。JFEの前身の一つであるNKKが1984年に米国のナショナルスチールを子会社化したが、2002年に倒産。この手痛い失敗を経験したからだ。
JFEの2013年の粗鋼生産量は3120万トン。中国の新興メーカーに抜かれ、世界10位に甘んじている。同社は過去にタイやベトナムで製鉄所の建設を検討したこともあった。しかし、中国産の鋼材が大量に流れ込んでいる現状では、計画は凍結状態だ。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら